カレンは、ビデオカメラと思しきアイコンをタッチし、アンテナの先端をビルに向けた。
「画面で選択したものを、自動的に探知するってわけ」
言いながら、アンテナをビルの上から下に向けて動かしていく。
画面にはビルの映像が映っており、ところどころに赤い点が灯っていた。
「この赤い点が、カメラの場所よ」
カレンが、悟に画面を見せながら説明する。
「へ~ えらいハイテクやな」
感心しながら、悟は画面を覗いている。
「一体、どんな構造になってるんや」
ひどく興味を掻き立てられたようだ。
悟の目が輝いている。
「サトルに説明してもわからないわよ。メカやコンピューターは苦手でしょ」
「まあ、その通りやな」
悟が、渋い顔をして頷いた。
カレンの言う通り、悟は機械音痴でコンピューターにも疎い。
スマホでも、電話とカレンに設定してもらった、カレンとのラインしか使えない。
カレンは機械にも強い。
その上、ソフトウェアにも精通しており、ハッキングの腕も相当なものだ。
この機械も、カレンが自作したものである。
カレンは、ただ荒っぽいだけの殺し屋ではない。
格闘技に優れ、銃器やナイフ、それに爆弾の扱いに精通し、胆力と細心の注意力を合わせ持ち、勘も鋭い。
また、語学も堪能で、機械やコンピューターにも強い。
おまけに料理も上手で、その上容姿も端麗ときては、まさに、神が作りたもうた、人類の最高傑作と言えるだろう。
ただ一つ、カレンに弱点があるとすれば、それは悟を好きになったことかもしれない。
「さっき、いろんなアイコンがあったけど、カメラ以外の物も探知できるんか?」
気を取り直したように、悟が尋ねた。
「そうよ」
「他には、どんなもんが探知できるんや?」
「そのうちわかるわよ」
「また秘密か。まったく、カレンはケチやな」
不服そうな顔をする悟に笑顔で応えて、カレンが赤い点をタッチした。