「どうやら、ここみたいね」
二人は、秋葉原と御徒町の中間くらいの、昭和通りから二筋ほど入ったビルの一角に佇んでいた。
秋葉原や上野が近いとはいえ、賑わっているのは中央通りの側で、二人のいる場所は、小さな会社が固まる一角だ。
そのため、日曜日の今日は、人通りはまったくといってよいほどない。
オコーナーが潜伏していると連絡があった建物は、五階建ての細長いビルだった。
雑居ビルではなく、前はどこかの会社の社屋だったみたいだが、今は誰も使っていないようで、取り壊されるのを待っているかのように、見るからに廃れていた。
「ほんまに、こんなとこにオコーナーが隠れてるんか?」
悟が、疑わしそうな顔でビルを見つめている。
「スコットの情報だと、ここなんだけど」
カレンは、鋭い目をして建物を観察していた。
「とにかく、確かめてみようや」
そう言って歩き出そうとする悟を、カレンが腕を掴んで止めた。
「馬鹿ね。あそこにオコーナーが潜んでいるとしたら、入口は監視カメラでモニターされているわよ」
悟を引き戻しながら、カレンがたしなめる。
「悪い、つい、焦ってもうて」
悟がバツの悪そうな顔をした。
それから、カレンを見る。
「でも、それやったら、どうやって入るんや」
カレンが「そうね」と言って、胸のポケットからスマホを取り出した。
カレンは今日、身軽に動けるようにバッグを持っていない。
黒いカーゴパンツを穿いて、上はジージャンというラフな格好だ。
「スマホなんかで、何をする気や」
「まあ、見てて」
カレンが、カーゴパンツのポケットから細い金属の棒を取出し、イヤホンジャックに差し込んだ。
その棒の先端は少し太くなっており、まるでラジオのアンテナのようだ。
「これはね、特殊探知機よ」
画面を操作しながら、カレンが説明する。
悟が画面を覗き込むと、画面にはいろんなアイコンが表示されていた。