他力本願は、自分を不幸にする。

 自分はなにもしないで、他人がなにかやってくれることを望んでいる。

 俺がそうだった。

 なにかあると、誰かのせいにした。

 今の生活が苦しいのも、会社や政治のせいにしていた。

 そのくせ、自分ではなにも動こうとしない。

 だから、いつも不幸だった。

 なんで俺だけがこんな目に遭わなきゃいけないと思っていた。

 目が覚めたののは、リストラに遭ってからだ。

 いきなり、会社から戦力外通告をされた。

 その時は、上司を恨み、社長を恨み、会社で働く全員を恨んだ。

 荒れて、酒に溺れた。

「くらない男ね」

 ふらりと入ったスナックのママに、そう言われた。

 初めてなのに、ママに愚痴や文句をこぼしまくったのだ。

 その一言が、俺の胸にぐさりと刺さった。

 それから俺は頑張った。

 ママを見返してやる、その一心だ。

 そのお陰で、再就職もでき、その会社でどんどん地位が上がっていった。

 今では、なにがあっても誰を恨むことなく、すべては自分だと思っている。