みんなの声援が、励みになった。

 九回裏、ツーアウト満塁。

 試合は、一点差で我がチームが勝っている。

 だが、この状況であれば、一つのヒットでサヨナラ負けの可能性がある。

 ファーボールでもデッドボールでも、同点だ。

 九回が始まる前は三点差あった。

 抑えの切り札が打ち込まれ、ここまで来てしまった。

 俺は、今日ファームから上がってきたばかりだ。

 昨年までは抑えをやっていたが、今年はどうも調子が上がらなくて打ち込まれ、ファームに落とされていた。

 乱打戦になって、両チームとも、投手はほとんど使い果たしている。

 相手が右バッターなので、唯一残っていた右投げの俺の、出番となったわけだ。

 相手のバッターは今日三安打だが、緊張はない。

 チャンスだという思いだけがある。

 ここで抑えれば、自信もつく。

 カウントは、ツーストライクノーボール。

 一球目は低めのボールで空振り、二球目は外角のカーブでファウル。

 三球目を投げた。渾身の高めのストレート。

 相手のバットが空を切る。

 俺は、右手を高く突き上げた。