ターニャはショットガンを背中に架け、サブマシンガンを右手に持つと、弾装帯を左肩に架けた。

 それから、手榴弾を幾つかポケットに捻じ込む。

 武装したターニャが、満足げに微笑んだ。

 ターニャもまたカレンと同様、根っからの武闘派のようだ。

 桜井と緒方も、サブマシンガンを二挺ずつ手に持ち、手榴弾を幾つかポケットに捻じ込んだ。

「これじゃ、戦争じゃねえか」

 そう言いながらも、どこか桜井も嬉しそうな表情を浮かべている。

 傭兵時代を思い出して、胸の底から熱いものが湧きあがってくるのを感じていた。

 カレンにターニャ、そして劉。

 これらの暗殺者に比べても、桜井は決してひけをとっていない。

 桜井も、根っからの武闘派だった。

 悟も銃を取ろうとした。

「あなたはいいの。素人が持ってたって、弾の無駄使いにしかならないもの」

 カレンが、サブマシンガンを持とうとした悟の手を押さえた。

 悟が、渋々ながらサブマシンガンから手を離す。

「いい子ね」

 カレンが微笑む。

「はい、これ。護身用よ」

 腰から引き抜いた愛銃を悟に渡した。

「撃ち方は知ってるわね。それを持って、邪魔にならないよう柱の陰にでも隠れてて。無駄に撃っちゃだめよ」

 そう言って、悟を柱の陰に追いやった。

「俺も手伝おうと思ったのに、まるで子供扱いやん。まあ、カレンの言う通りやからしゃあないか」

 悟はぶつぶつと呟きながら、渡された拳銃を右手に提げて、カレンの言う通りに柱の陰に身を隠した。

「本当に、サトルが好きなのね」

 ターニャが銃を点検しながら言う。

「なにを言ってるの」

「サトルを危険に晒したくないってのもあるでしょうけど、それより、サトルに人を殺させたくないんでしょ。しかも、サトルが傷つかないような言い方をして」

「勝手に言ってなさい」

 言ったカレンの顔には、少し赤みが差していた。

 そんなカレンを見て、ターニャは愛とは不思議なものだと思った。

 今のカレンは、お互いライバルとしてぶつかり合っていたときとは、まるで人が違っている。

 その頃のカレンには、ターニャでさえ背筋が凍るほどの迫力があった。

 そんなカレンに、ターニャは畏敬の念さえ抱いたものだ。

 桜井は二人の会話を聞きながら、カレンにここまで惚れられている悟が、羨ましいのか可哀相なのか、どう捉えたらよいものか判断がつきかねていた。

 まったくの興味本位ではあるが、一度悟の本音を訊いてみたいと、心底思った。