「なに、人のことを勝手に話してるの。ターニャ、あなただって、以前はもっと冷酷だったじゃない」
カレンが、持ってきたバッグを開けながら反論する。
バッグの中には、大量の銃器が詰まっている。
「そうだとしたら、あなたのペースにまき込まれているだけよ。まったく、私としたことが」
この二人は、本当に内調の資料に載っているような危険人物なのだろうか?
カレンとターニャのやり取りを聞いていて、桜井の胸には疑念が生じていた。
桜井がターニャと出合ったのは、二人がまだスパイとして駆け出しの頃だ。
その頃のターニャは、今のようにエンジェル・スマイルとも呼ばれておらず、どこか甘さを残しているところがあった。
その記憶が抜けきれない桜井には、余計にそう思えたのだ。
「そろそろ来るわよ。さあ、好きなのを選んで」
カレンが、バッグの中身を床に並べながら二人に言った。
サブマシンガンにポンプ式ショットガンに拳銃、それぞれの弾装帯。
それに、なんと、手榴弾やグレネードランチャーまである。
カレンにとっては、まさに宝箱だ。
「随分、派手に揃えたわね」
並べられた武器を見て、ターニャの顔が輝いている。
桜井は、さきほど思ったことを取り消した。
やはり、この二人は危険人物だ。
改めて、そう思い知らされた。
「重たい思うたら、こんなようけ詰め込んどったんか。ようそんなん、平気で担いどったな。大体、どこからこんなもん持ってきたんや」
悟も驚いてはいない。
それどころか、しごく暢気な口調で感心している。
こいつも、ある意味危険人物だな。
桜井は、悟に何か得体の知れぬものを感じた。