芦屋から六甲山に登る中腹にある、パーキングエリア。

 心が疲れたとき、ここへ来る。

 ここからは、西宮と芦屋の夜景が見下ろせる。

 神戸ほどではないが、宝石を散りばめたように家々が輝いている。

 眼下に広がる宝石を眺めていると、心が穏やかになり、嫌なことなどどこかに飛んで行ってしまう。

 空気が澄んでいるせいか、晩秋や冬は宝石の輝きがいっそう増す。

 寒風に身を晒して、夜景を眺めるのも乙なものだ。

 彼女に振られたときなど、夜が明けるまで眺めていた。

 夜が白み始める頃、宝石の輝きは薄れてゆく。

 その様が、なんともいえない風情を醸し出す。

 そのとき、なぜか吹っ切れた。

 身体は冷えきっているのに、心は温かかった。

 不思議だ。

 自然ではなく、人工的なものに心が落ち着くなんて。

 ひとつひとつの宝石の中に、人々の現実の暮らしがある。

 幸せな家庭ばかりではないはずだ。

 しかし、こうやって輝きを眺めていると、みんな幸せではないかと思える。

 夜景は、俯瞰して見ることの大切さを教えてくれているようだ。

 そして、今日も夜景を眺めている。