「俺の体には、発信機付きの爆弾が埋め込まれてるって。そいつは、俺が死んだり取り外そうとしたら爆発するようになっとるってな。だから、俺を連れていっても無駄やと言ったんや。ついでに、リモコン操作もできるって言うたった」

 悟が、笑いながら説明する。

「どうして、サトルがそのことを知ってるの?」

 悟の足が止まる。

 顔から笑みが消えている。

「マジで? ホンマに? 俺の体には、爆弾が埋め込まれとるんか」

 悟が心底驚いた。

 目が見開かれ、あんぐりと口を開けている。

「冗談よ」

 カレンが笑って否定したが、悟は疑い深そうな目差しをカレンに向けた。

 カレンも足を止めて、悟に向き直った。

「いいこと、サトル。あなたを愛している私が、そんなことをすると思う? 第一、サトルに知られずに、そんなものを埋め込めるわけないでしょ」

腰に手を当ててそう言うと、「さあ、そんなところで立ち止まってないで行くわよ」、付いて来いというように首を振って、再び歩き出した。

 驚きから立ち直った悟が、カレンの後に付いてゆく。

「何か仕掛けられていないか確認するから、ここで待ってて」

 カレンが駐車場の入り口で悟を留めると、一人でハマーの点検に向かった。

 カレンがハマーを点検している間も、悟はまだ爆弾のことが頭から離れなかった。

 まさか、いくらカレンでもそこまではせんやろ。

 でも、カレンやからな。

 しかし、いつ埋め込んだんや。

 ひょっとして、あのときか?

 あれこれ考えながら、腹部の銃創をさすった。

 思い悩む悟の目の前に、何やら小さな箱型の金属が差し出された。

「なんや、これ?」

「爆弾。エンジンを掛けるとドカンというやつ。ちゃちな代物よ。さすがに、こんな人通りの多い場所では、緻密な仕掛けは出来なかったようね」

 言って、カレンはその爆弾をポケットに入れた。

「なあ、俺の体に埋め込まれてるのも、そのくらいの大きさか?」

 悟はまだ疑っている。

「なによ。まだ、さっきの冗談を気にしてるの。さっきも言ったけど、愛する人に、私がそんな酷いことをするはずないじゃない。いつまでも馬鹿なことを言ってないで、早く乗って」

 そう言われても、悟はなおも疑いを捨てきれない。

 しかし、いつまでも気にしていても仕方がないので、悟は爆弾のことは考えないようにして車に乗り込んだ。

 考えてみれば、体に爆弾が埋め込まれていなくても、カレンが爆弾そのものなのだ。

 それも、核弾頭付きの。

 そう思うと、体に爆弾が埋め込まれていることくらい、悟にはなんでもないことのように思えて気が軽くなった。