「警察です、開けて下さい」
 それを聞いた瞬間、咄嗟にカレンが銃をバッグにしまった。
 悟が、ターニャの銃を素早くベッドの下に蹴り込む。
 ベッドを見て、銃が見えないのを確認した悟が、ドアスコープから警官であることを確認し、落ち着いた動作でドア開けた。
「さきほど、上の階で騒ぎがありましたが、あなた方は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。えらい騒ぎですけど、何があったんですか?」
 怯えた様子で悟が尋ねる。
 カレンとターニャも、不安げな表情を装っている。
「それは申し上げられません。ところで、あなた方はどのような用事で宿泊されているのですか?」
 風采の上がらない日本人の男と、二人の外国人美女の取り合わせに不審を抱いたのか、警官が胡散臭げな目で悟を見ながら訊いてくる。
「ああ、この二人はモデルでして、私がマネージャーなんですよ。ファッションショーに出てもらうために呼んだんです」
 悟が、咄嗟に口から出まかせを言う。
「そうですか」
 悟の返答に納得したのか、警官はそれ以上追及しようとはしなかった。
「ところで、いつからここに?」
「昨夜からです」
 また、悟が出まかせを言った。
「この部屋に三人で?」
 警官が不審な顔をした。
「いいえ、部屋は別々なんですが、なんかえらい騒ぎでしょう。だから一緒に居た方が良いと思って、ここに集まったんです」
 悟は詰まることなく、出まかせを吐き続けている。
「それに、この二人が怯えていましてね、今、一生懸命宥めていたところなんですよ」
 そう言って、カレンとターニャを見る。
 カレンとターニャは神妙な顔をしてうなづいたが、内心では笑いを堪えるのに必死だった。