「まあ、いいけど。とりあえず、私と一緒に来てもらうわよ。あなたさえよければ、カレンとも別れさせてあげるわ」

「その前に、俺の知ってることを全部喋れって言うんやろ」

 ターニャが無表情に頷く。

「よくわかってるわね。そうよ、私たちのところへ来て、あなたが知っていることを 全部話してくれたら、そのあとでカレンの手の届かないところへ連れて行って、あなたを自由にしてあげるわ」

「お断りや」

 悟が、にべもなく断る。

「呆れたわね」

 ターニャが小さく首を振る。

「あなた、自分の立場がよくわかっていないようね。私は、あなたにお願いしてるのではなくて、命令しているのよ」

 厳しい口調で言って、ターニャが悟の胸に銃口を向ける。

「撃ちたけりゃ、撃ったらええやん。でもな、ターニャも吹っ飛ぶで」

 銃口を向けられても、悟は怖気ることなく、ターニャの目をじっと見据えている。

「俺の体にはな、発信機付きの爆弾が埋め込まれてるんや。ほら、カレンって、CIA時代に色んな奴から恨みを買うてるやろ。だから、俺が狙われることがあるかもしれん言うてな。だから、俺が拉致られても、居場所がわかるように埋め込んだんや。それに、助けられんと思うたら、リモコンで爆弾を爆破させるって。敵の手にかかるくらいなら、自分の手で始末をつけるらしいわ。それにな、この爆弾は俺の心臓が止まったり、取り出そうとしても爆発するんやって」

 そう告げる悟の口調は、実に淡々としたものだ。

 それだけに、真実味があった。

「まさか、そんなの嘘でしょう」

 悟があまりにも淡々と言ってのけたので、ターニャは半信半疑ながら、ややたじろいだ。

「嘘やと思うか? カレンやで」

 悟が、不敵な笑みを浮かべる。

 確かに、カレンならやりかねない。

 そう思ったターニャは、悟を連れ去るべきかどうか迷った。

「私の旦那にちょっかいを出すなんて、いい度胸してるじゃない」

 いつのまに戻ったのか、カレンがドアに寄りかかり、ターニャの背に銃口を向けている。 

 悟の言葉に動揺し、油断が生じていたターニャは、カレンが入ってきた気配に気付かなかった。

 ターニャの背中がピクリと震えた