「ターニャやないか」
自分に向けられた銃口を恐れもせず、悟は親しい友人に久しぶりにあったような気軽な口調で声をかけた。
悟の目の前にいるのは、カレンの最大のライバル、ターニャだった。
どうやら、二人は知り合いのようだ。
「久しぶりね」
何の感情も表さずに、ターニャが言う。
「どうして、ここに?」
「馬鹿な連中はうまく騙せても、私の目は誤魔化せないわよ」
「カレンといいターニャといい、ほんま、君らは凄いな」
拳銃を突きつけられているというのに、悟は妙なところに感心している。
「元気そうじゃない」
「お蔭さまで」
悟が、にこにことした顔で答える。
「あんな目に合ったっていうのに、あなた、まだカレンなんかと関わっているのね」
ターニャが、皮肉な笑みを浮かべた。
「しゃあないやん。別れるなんて言ったら殺されるし」
「それにしては、あまり嫌そうには見えないけど」
それには答えず、悟は黙って肩をすくめた。
二人が知り合いなのは、カレンと知り合ったきっかけになった事件に、ターニャも絡んでいたからだ。
ターニャも、カレンと同じターゲットを狙っていた。
カレンはターニャの裏を掻いて、まんまとターニャを出し抜き、見事ターゲットを仕留めた。
ターニャは出し抜かれた屈辱を晴らすため、脱出しようとするカレンの前に現れた。
二人はぶつかった。
お互いに、長い因縁に終止符を打とうとしていた。
その時、カレンに暗殺されたターゲットの手下共が、ボスの仇を討とうと、大挙して三人を押し包みつつあった。
その一人が、カレンか「ターニャに向けて銃弾を放った。
その気配を感じた悟は、その前に二人を分けるべく、二人の間に入っていた、
その悟を、銃弾が貫いた。
珍しく熱くなっていた二人は、悟が撃たれるのを見て我に返った。
カレンは悟を抱えて、ターニャはそれを援護しながら、その場を脱出した。