「なんで?」
「内緒。まあ、そのうちわかるかもね」
「また、それか。まったく、秘密や内緒が多いな」
恨めしそうな目でカレンを見て、悟が嘆息した。
「だって、美女には謎が付きものでしょ」
臆面もなく言い放つカレンに、悟は苦笑するしかなかった。
「それにしても、さっきの爆発音は凄かったな。あいつら、なにをやらかしたんやろ?」
「あれは、私からのプレゼントよ」
「カレンの…」
悟が小首を傾げる。
「そういえば、なんや、寝室のドアをいじくとったな。ひょっとして、あれか?」
「そう、ドアを開けたら爆発するように細工しておいたの。あんな子供騙しの手に引っ掛かるなんて、あいつらプロ失格ね」
言いながら、カレンが悟に顔を近づけてきた。
「どうしたん?」
「ご褒美」
悟は苦笑して、カレンに軽く口付けをした。
敵の襲撃を見越してトラップを仕掛けたり、冷酷に素早く五人の襲撃者を射殺したりするカレンだが、悟の前だと、ときたま駄々っ子のようになる。
「ちょっと様子を見てくるから、サトルはここに居て」
満足気な顔をして、カレンはそう言い残して部屋を出ていった。
その頃には、ホテル中に非常ベルが鳴り響いていた。
早朝なので、チェックアウトの客も多く、ホテル中がパニックに陥っていた。
いたるところで、悲鳴や怒声が飛び交かっているのが聞こえてくる。
カレンが出ていってから暫くして、悟のいる部屋のドアが、音もなくそっと開いた。
窓から、パトカーや消防車、それに救急車が大挙して駆けつけるのを眺めていた悟が、ふと人の気配を感じて振り向いた。
悟が向けた視線の先には、あざやかなプラチナブロンドの美女の姿があった。
その美女は、凍るような冷たい目をして、見る者をぞっとさせるような微笑を浮かべている。
手には拳銃が握られており、銃口は真っ直ぐに悟に向けられている。