二人が非常階段の扉の前まできたとき、二人が居たスイートルームから、ガラスの割れる大きな音が聞こえた。

 続いて、機関銃と思われる乾いた掃射音が聞こえてくる。

 慌てて扉を開けようとする悟の腕を取り、カレンは悟を抱きしめるようにして、扉の横に身を寄せた。

 そして、人差し指を悟の口に当て、軽くウィンクしてみせる。

 悟が声を出さずに頷いたとき、扉がゆっくりと開いた。

 廊下の様子を窺っていたのか、扉が開いて数秒してから、五人の東洋系の男たちが次々と入ってきた。

 男たちはそれぞれ短機関銃を構えながら、二人のいたスィートルームへと向かっていく。

 その男たちの背中へ向けて、カレンが引き金を引く。

 くぐもった銃声と共に、次々と男達が倒れてゆく。

 無造作に撃っているように見えるが、カレンは正確に男達の心臓を背中から撃ち抜いている。

 最初の男が倒れてから、五人目が倒れるまでに一秒と掛かっていない。

「行くわよ」

 何事もなかったように小声で言ってから、カレンが非常階段へと出た。

悟も後に続く。

 二段ほど降りたとき、二人が居たスイートルームから、凄まじい爆発音が轟いた。

「お馬鹿さん」

 ぞっとするような笑みを、カレンが浮かべる。

 爆発音を聞いて振り返っていた悟は、そんなカレンの笑みに気が付かなかった。

 カレンは悟を急がせ、足音を立てぬように階段を駆け下りた。

 二階下まで降りたとき、カレンが足を止め、非常扉をそっと開け、廊下の様子を窺う。

 誰もいないのを確認すると、悟を促して中へと入った。

 入って直ぐの部屋の鍵を、カレンが素早く開ける。

「びっくりしたな。俺らが部屋へ入ったのを見計らったように、いきなり襲ってくるんやもんな」

 言ったものの、悟はさして驚いた様子ではない。

「それにしても、なんでカレンがこの部屋の鍵を持ってるんや?」

 どうやら、こちらの方が悟には驚きだったようだ。