赤い風船が空に浮かんでいる。

 誰かが飛ばしたのだろうか。

 それとも、小さな子供の手を離れて飛んだのか。

 まるで生き物のように、ふわりふわりと舞っている。

 そういえば、最近はとんと風船を見かけなくなった。

 昔は、よく商店街などで配っていたものだが。

 なにか理由があるのだろうか?

 もしかして、地球環境に配慮しているのかも。

 子供の頃は、風船をもらうと嬉しかった。

 そして、ふとしたことから手を離れて空に舞い上がったときには悲しかった。

 それで、何度か泣いたことがある。

 今も、どこかで子供がないているのだろうか。

 赤い風船を見ながら思った。

 あの風船は、誰が飛ばしたんだろう。

 子供の手から離れて飛んでなければいいが。

 突然、風が吹いてきた。

 持ち主のわからない風船は、風に乗ってぐんぐん空へと舞い上がっていく。

 なるべく遠くまで旅をするんだぞ。

 心で思いながら、遠ざかる風船を見守っていた。

 もう、風船は見えない。