昔ながらの、昭和の時代を色濃く残す商店街があった。

 その商店街は、外国人の観光客が多く訪れる観光地から少し外れた場所にあり、少し前までは地元民だけが買い物に訪れ、徐々に寂れつつあった。

 近くにスーパーが出来たのも、商店街に打撃を与えた。

 しかし、昔馴染みの客はその商店街に愛着があり、そのお陰で商店街は細々と保っていた。

 ところが、ある外国人のSNSへの投稿がバズって、その商店街に多くのインバウンドが訪れるようになった。

 商店街は、これまでにないほどの活況を呈した。

 今が稼ぎ時だ。

 商店街の店主たちは有頂天になり、どんどん値を上げていった。

 これまで毎日通っていてくれた近所の住人のことなど一顧だにせず、あり得ない値段設定にしていった。

 それでも、インバウンドは金を落としてゆく。

 当然のことながら、近所の住人は呆れてしまって、何十年も通い続けていた人々も、スーパーで買い物をするようになった。

 有頂天なっていたのも束の間、インバウンドは徐々に減少していった。

 ブームは一過性に過ぎず、困った商店街の店々は値段を元に戻したが、一度離れた近所の住人は戻ってこない。

 インバウンド需要が収束してしばらくして、その商店街は潰れてしまった。