「見ればわかるでしょ。早く」

「俺は、素人やで」

 文句を言いながらも、悟は見当を付け、ピンを抜いて筒を引っ張った。

 すると筒が伸びて、自動的に照星が飛び出てきた。

「なんや、これ」

「いいから、こっちに渡して」

 悟の驚きを無視して、カレンが右手を差し出す。

 カレンはRPG22を受け取りながら、

「もう少し先で、左にカーブしているのが見えるでしょ。今からサトルにハンドルを預けるから、私が声をかけたらハンドルを右に切って。命は預けたわよ」

 そう言って悟にハンドルを握らせ、RPG22の安全装置を外して、窓から身を乗り出した。

 足は、アクセルを踏んだままだ。

 脚の長いカレンだからできることであろうが、それにしても器用なものだ。

 前後のトレーラーは、すでにハマーと数十メートルという距離にあった。

 このままだと、ものの十秒もしないうちに、挟まれて潰される運命にある。

 後方のトレーラーが、目も眩まんばかりのハイビームに切り替えたとき、無造作ともいえる仕草で、カレンがRPG22を発射した。

 乾いた発射音を残して、弾は前方のトレーラーの左を掠めるように飛んでいき、トレーラーの直ぐ前にある落石防止用のコンクリートに当った。

 その瞬間、腹に響くような爆発音が轟く。

 砕け散ったコンクリートの塊が、雨のようにトレーラーに降り注ぐ。

 そのうちの幾つもが、フロントガラスを突き破った。

 カレンは、発射と同時にRPG22を投げ捨てて、乗り出した身体を引っ込めながら「今よ!」と叫んだ。

 カレンの叫びを受けて、悟がハンドルを右に切る。

 同時にカレンが、アクセルを思い切り踏み込んだ。

 無数のコンクリート片に体中を貫かれて絶命した運転手を乗せたトレーラーは制御を失い、そのまま斜面に激突した。

 その勢いで、トレーラーの車体は、右へ傾いて横転し、そのまま横へ滑っていく。

 滑るトレーラーの横を掠めるようにして、危うくハマーがすり抜けていった。