いい月だ。

 満月ではないが、それに近い。

 マンションのベランダで洗濯ものを干しているとき、ふと空を見上げた。

 しばらく、煌々と夜空を照らしている月を見ていた。

 月を見ているうちに、いいことを思い付いた。

 洗濯ものを干し終えると、リビングから椅子をベランダに引っ張り出す。

 そして、小さな脚立をまえに置く。

 脚立の上につまみと、氷を入れたグラスと、バーボンのボトルを置く。

 月見酒ならぬ、月見バーボンだ。

 季節は四月の中旬、寒くもなく暑くもなく、ちょうどよい気候で、時たま頬を撫でてゆく風が心地よい。

 月を眺めながら、バーボンのロックを飲む。

 実に、爽快な気分だ。

 月見は、なにも秋だけとは限らない。

 いつの季節でも、こんないい月を見れば一杯やりたくなる。

 どのくらい経ったのか、どのくらい飲んだのか、気が付くと半分ほどあったボトルが空になりかけていた。

 その間、なにも考えず、ただ月を眺めていた。

 自然とは、こんなにも人の心を豊かにしてくれるんだ。

 新たな発見を胸に、ボトルに残った最後の酒をグラスに注いだ。