ヒューストンが掴んでいる情報でも、劉は護衛には向いていない。
そんな役は、劉自身も嫌がるだろう。
カレンの推測通り、オコーナーと赤い金貨の間で何か揉め事があったとすれば、劉が出てきたことも、ターニャが投入されたことも、すべて辻褄が合う。
もしそうだとしたら、オコーナーは一体何をしようとしているのか。
ヒューストンが腕を組んで考え込んだ。
「だとしたら、カプセル型爆弾の回収とオコーナーの拘束は難しいかもね」
考えに耽っているヒューストンの耳に、カレンの声が飛び込んできた。
「何が、言いたい?」
意味ありげに、カレンが微笑む。
「ターニャとリュウを相手に動きを制限されてたんじゃ、不覚をとる可能性が高いわ。だから、万一の場合は私に任せてくれる?」
「つまり、カプセル爆弾をぶっ壊して、オコーナーを葬り去る、そう言いたいんだな」
「そういうこと」
カレンが悪戯っぽい笑みを湛えて、嬉しそうに答えた。
そんなカレンを見て、ヒューストンはため息をついた。
「仕方あるまい、最悪の場合は君に任せる。重要なのは、カプセル型爆弾の試作品と設計図が、我が祖国以外の国や組織に渡らないことだからな」
ヒューストンは、渋々ながら承諾せざるをえなかった。
「任務は、カプセル型爆弾の試作品と設計図の回収およびオコーナーの拘束。ただし、やむなき場合は、それらの破壊とオコーナーの抹殺。その判断は、私に任せる。この認識でいいのね」
とても嬉しそうに、カレンが念を押す。
「それでいい」
カレンとは対照的に、仏頂面をしてヒューストンが答える。
「で、報酬は?」
「報酬? あれが、ロシアか赤い金貨の手に渡ったら、我が祖国は大変なことになりかねないんだぞ。カンパニーだけの問題じゃ済まなくなるんだ」
「私には、祖国なんてどうでもいいの。私が大切なのは、サトルだけよ」
声を荒げるヒューストンに、カレンは冷笑を浮かべながら、平然と言ってのけた。