「兄ちゃん、ごっついはくいねえちゃん連れとるやないけ。ちょっと、わいらに貸したってくれへんけ」
大阪ミナミの繁華街。腕を組んで歩いていたカップルに、三人のチンピラが絡んできた。
時刻は、既に深夜の二時を回っている。
さすがにこの時間になると、繁華街といえども人通りはほとんどない。
ジーンズにフランネルのシャツというラフな格好であるが、チンピラの言う通り、 その女性は見事な金髪で、アメリカかイギリスと思われる。まごうことなき美貌の持ち主である。
それも、並の美貌ではない。
トップモデルやハリウッド女優と言っても、誰も疑わないような美女である。
身長は一六五センチくらいと外国人にしては少し小柄だが、シャツの胸はほどよく盛り上がり、胸元まで開けたボタンからは、形の良い白い谷間が覗いている。
くびれた腰に、張りのあるヒップ。スラリと伸びた形の良い脚に、細見のジーンズがぴったりとフィットしている。
まるで、ファッション雑誌から抜け出てきたような、見事に均整のとれた肢体だ。
深いエメラルドグリーンの大きな瞳。ほどよい高さで形の良い鼻。少し大きめの口に愛らしい唇。背中まである、ふわりと自然にカールした髪は、あざやかなブロンドだ。
美人といっても、近寄りがたいような冷たい印象の美人ではなく、どちらかというと愛らしい感じで、男が守ってやりたくなるような雰囲気を持った女性だった。
連れの男はというと、背丈だけはかなり女性より高いものの、少し痩せぎすの日本人だ。
美男でもなければ、取り立ててぶさいくということもない。
どこにでもいそうなサラリーマン風の、少し頼りなげな感じのする男だった。
連れの女性とは、まったく釣りあいが取れていない。
腕を組んでいなければ、モデルか女優が通訳を従えているように見えるだろう。
絡んできたチンピラは、見るからに頭が悪そうで、体全体から、粗暴な雰囲気を漂わせている。
「冗談言わんといてください。あなた達に貸すやなんて、そんな事ができるわけないやないですか」
意外にも連れの男は、怯む様子もなくチンピラに反論した。