「ゆうべね、瑞輝からメールが来たの。イシスが解散するかもしれないって」
廊下へ出るなり、涼子が携帯を見せながら言った。
「なんやって」
健一が涼子から携帯を引ったくるようにして手に取り、瑞輝のメールを読んだ。
メールには、まだわからないが。もしかして解散するかも、ということだけが書かれてあった。
「これだけか?」
「これだけよ」
「今まで、なんも聞いてへんのか?」
「ええ、何も聞いてないわ。先週電話で話したときも普通にしてたし。それでね、メールを送ったんだけど返事が返ってこなくって。電話しても留守電になっているし、折り返しの電話もないのよ」
涼子も戸惑っている様子だ。
「そうか、なんかあったんやろうな。事情はわからへんけど、俺らが心配してもどうしようもないな。何か進展があったら、また知らせてくると思うで。そやから、あんまり心配せんとき」
順調だったイシスが解散するなんて、余程のことがあったに違いない。
イシスに何が起こったのか、健一も凄く気になった。
しかし、自分が心配してもどうにもならないことだ。
健一はそう思い定めて、浮かない顔をした涼子を励ますように、涼子の肩を叩きながら明るい口調で言った。
「そうね。ここで、私が心配していても始まらないわね。なにかあれば、瑞輝から連絡がくるだろうし。健一の言う通り、瑞輝を信じて連絡を待つことにするわ」
涼子の顔が晴れることはなかったが、それでも、少し気が楽になったようだ。
「悪かったわね。いらぬ心配かけちゃって」
「いや、教えてくれてありがとう」
二人は何事もなかったような顔を取り繕って、事務所へと戻った。
その夜、健一は早めに仕事を切り上げて、夜景を見にきていた。