次に、経営者として、どのような心構え持って望むべきかを考え始めた。
基本は、はっきりしている。
社員を大事にし、お客様を大切にする。
そのためには、自分はどうすべきか?
夜景も目に入らぬほど、健一は深い考えに沈み込んでいた。
健一の肩が、いきなり叩かれた。
自分がどこにいるかわからないほど考えに耽っていた健一は、心臓が止まるかと思うほど驚いた。
ビクッと大きく肩を震わせ振り向いた健一の前に、悪戯っぽい笑みを浮かべた麗が立っていた。
麗の笑顔は、夜景よりも輝いている。
「無用心やね。健の背中、隙だらけやったわよ。後ろから襲われたら一発よ」
麗が、声を立てて笑う。
「誰が、襲うねん」
健一がドキドキする胸を押えながら、恨みがましい目で麗を見た。
「なんで、ここに?」
「健が、ここにいると思ってね」
健一がは、呆けたような顔をする。
麗に翻弄される度に、健一の顔が変わってゆく。
「嘘に決まってるでしょ。なんて、間抜けな顔してるのよ」
麗が、さも可笑しそうに笑いながら、健一の肩をバンバンと叩いた。
「健がここに来てるなんて、わかるわけないでしょ。超能力者やあるまいし。うちも考えたいことがあってここに来ただけよ。健と会ったのは偶然よ」
「ほんま、立て続けにびっくりさせてくれるな」
またもや、麗が声を出して笑った。
麗の笑顔を見ていると、先ほどまでの悩みはどこかへ飛んでしまい、健一の胸が幸せで満たされてゆく。