「麗、あんたの気持ちはようわかった」

 そう言うと、千飛里は瑞輝の方を向いた。

「瑞輝、今までしょうもない意地を張っててごめんな」

 千飛里は瑞輝に頭を下げたあと、麗と春香に向き直った。

「麗、それに春香、あんたらにも迷惑かけたね」

 二人にも、頭を下げる。

「今の麗の言葉で、目が覚めたわ。いつまでも、見果てぬ夢を追っかけてたって仕方ないわね。そんならいっそ開き直って、うちらのことを面白おかしくお芝居にしたろうやん。もちろん、泣けるところも入れてな」

 千飛里は、晴れ晴れとした顔をしている。

「うちも、麗に負けてられへん。このお芝居に全身全霊を傾けるで」

 麗に触発された千飛里の言葉は力強く、三人に熱い気持ちが伝わってきた。

「私もよ」

「私もです」

 瑞輝と春香にも闘志が沸々と湧きだしたようで、二人の返事も力強かった。

「そうと決まったら、早速、話を練り上げようやないか。みんな、もういっぺんうちに付いてきてくれるか?」

 千飛里が三人を見回す。

「当たり前やん。そうやなかったら、とっくに見放してるわよ」

 瑞輝が笑いながら答える。

「水臭いことは言いっこなしですよ」

 春香の言葉に同意して、麗も「そうです」と続いた。

「ありがとう。よっしゃ、頑張るで」

 千飛里が右手を差し出した。

 その手に瑞輝の手が重なる。

 その上に、麗と春香の手が重ねられた。

 こうして、四人の気持ちはひとつになった。

 四人は、龍が天に昇るがごとく、勢いよく駆け上がろうとしていた。