丘の上に立つ。

 見下ろすと、斜面を埋めるみかん畑が目に映る。

 その向こうは海だ。

 童謡の挿絵のような景色だ。

 海から吹きつけてくる風が、塩の匂いと共にみかんの香りを運んでくる。

 鼻孔をくすぐる、なんともいえぬ香り。

 夕暮れ時だというのに、どういう作業をしているのかわからないが、みかん畑では何人もの人が動いている。

 それを見ていると、我々が食べる野菜や果物には多くの手間がかけられているのがわかる。苗や種を植えたら終わりではないのだ。

 普段はそんなことを気にもしないで食べているし、少しでも値があがれば文句を言ったりするが、こうやって丹精を込めて作ってくれる人がいるから、当たり前のように食べられることを実感し、感謝の念が湧く。

 急峻な斜面で働く人々、潮風に晒されながら頑張る人々。

 もっと過酷な環境で作物を育てている人もいっぱいいるだろう。

 食べ物だけでなく、我々が日常生活を送るために、過酷な環境や夜も働く人々が大勢いる。それが仕事だか当たり前だと思っていたが、そういった人々がいなければ、我々の生活は成り立たないことを実感した。

 私は、世間に甘えていた。

 これからは、なにごとにも感謝の気持ちを持つようにしよう。