爆破までの猶予は一日しかない。

 アメリカとしては日本がどうなろうとどうでもよいのだが、赤い金貨に金が渡るということは、中国を潤すことになる。

 それを防ぎたいがためにカレンに応援を寄越すと言ってきたが、カレンはにべもなく断った。

 どんなに優秀なエージェントでも、カレンにとっては足手まといにしかならない。

 不思議なことに、悟は戦うこともしないが、一緒にいて足手まといにもならない。

 CAIが掴んだ赤い金貨の残る一つの拠点は、新宿歌舞伎町にあった。

 表向きはフィリピンパブで、地下にアジトがある。

 東京駅の爆破の期限を明日に切ったのは、カレンとターニャを焦らせるためであった。

 どんな人間でも、焦りはミスを生む。赤い金貨はそれを狙っていたのだ。

 だが、ここまで幾度となく戦い、幾度となく煮え湯を飲まされたにもかかわらず、赤い金貨は二人のことを知らなさ過ぎた。

 カレンもターニャも民間人を巻き添えにはしないが、テロによって死ぬことなどなんとも思っていない。

 カレンには悟だけ、ターニャは自分だけ。

 それ以外はどんな人間が死のうと、まったく関心がない。

 それが、カレンとターニャという人間だ。

 この時点で、赤い金貨の敗北は決定していたといえよう。