多田野さんと今池さんは二人の姿を見るなり顔色を変え、腰を浮かせた。
だが、木島さんと古川さんががこちらへ歩いて来たので、二人共、浮かせた腰をまた沈めた。
「よう」
気さくだが、ドスの利いた声で木島さんが俺に声をかける。
「久しぶりです」
今朝会ったばかりだけどな。
俺は、普段と変わらぬ態度で頭を下げた。
「聞いたぜ、この間は活躍だったそうじゃねえか」
木島さんがカウンターから椅子を持ってきて、古川さんと腰を降ろした。
かなり高いので、俺達を見下す格好になる。
それが、多田野さんと今池さんに、よけい威圧感を与えていた。
多田野さんと今池さんは、完全にブルっている。
「この間って?」
古川さんが、絶妙なタイミングで問い掛ける。
「いやね、この洋ちゃんが、金羽組の奴らがこの店を地上げしようってところに出くわして止めに入ったんだが、逆に絡まれちまって、取っ組み合いの末、警察に突き出したった話だぜ。相手は、三人だとよ」
「へえ、やるもんだね。金羽組といやあ、広域暴力団の岩戸組の傘下じゃねえか」
俺は、振りでなく、本当に照れた。
確かに、止めようとした。
しかし、俺の力では歯が立たなかったのだ。
いくら多田野さんと今池さんを取り込むためとはいえ、少し居たたまれない気持ちになった。
「そうなのよ」
文江さんが、ここぞとばかりに相槌を打つ。