世界は混沌としている。

 わずか数ケ国の大国がそうさせている。

 どの国も、自国の権益しか考えていない。

 このままいけば、近い将来人類は滅びるだろう。

 西暦202X年、ある政治評論家が言った言葉だ。

 世界各国の民衆は、多少の懸念は抱いていたものの、どこかで高を括っていた。

 人間には理性があるのだから、世界を滅ぼすような戦争はしないだろうと。

 それは、核の使用だ。

 しかし、その思いは見事に打ち砕かれた。

 覇権を争うような人間に、普通の人の理念は通用しない。

 自分が負けるくらいなら、相手を道連れにしてやる。

 そういった捻じ曲がった心の持ち主だということを、普通の人は見落としていた。

 そして、もうひとつ見落としていたのは、そういった人間は自国の民でさえ虫けら同然に思っているということだ。

 口ではうまいことを言うから、多くの民衆は騙される。

 その人間のやり口を注意して見ていれば、人間性がわかろうというものだが、心地よい言葉を囁かれると、それを信じて懐疑的な見方をしないものだ。

 そして、評論家が言った翌年、人類は滅んだ。

 覇権を争う者だけが悪いのではない。

 これは、人類すべてが招いた帰結だ。