「そこが、男の馬鹿なところなのさ。自分のことは棚に上げておいて説教する。そんな奴に限って、ボトルは入れないし、女の子に飲ませもしない。まあ、日頃、よっぽど鬱憤が溜まってるんだろうよ」

 顔とは反対に、口調は掃き捨てるようだ。

「世の中、くだらねえ男が多すぎるぜ」

「あんた、他人のことが言えた義理かい」

 木島さんの言葉を、文江さんが混ぜっ返す。

「違げえねえ」

 一同が大爆笑し、険悪になりかけていた場が一気に和んだ。

 俺は、キャバクラやクラブには、接待で何度か行ったことがあるだけだ。

 あまり興味がなかったので、ああこんなところなんだと思って、ただ横に着いた女の子と他愛もない話をしながら、酒を飲んでいた。

 キャバクラやクラブなんて、そんなとこだと思っていた。

 それは、少しは下心のある奴もいるかもしれないが、そんな奴は風俗に行った方が手っ取り早い。

 ひとみさんや文江さんの話を聞いていると、とんでもない世界だと痛感した。

「洋ちゃんは、一本気だからね」

 俺の心を読んだように、古川さんが俺を見て微笑み、それからグラスを傾けた。

「そうそう、あんたは少し、純情過ぎるんだよ」

 文江さんにも言われた。

 う~ん、二十八歳にもなって純情って言われるのは どうなんだろうか。

「褒めてるのよ」

 だよな。ここは、文江さんの言葉通りに受け取っておこう。

「しかしよ、このままじゃいけねえな」

 木島さんが本題に戻した。

「そうだねえ、エスカレートすると、ひとみさんに危害が及ぶ可能性があるね」

 文江さんも経験があるのだろう、言葉が重い。

「ストーカーって、ちょっとやそっとでは諦めないんですか?」

「そんなに直ぐに諦めるような奴は、ストーカーになんかならないよ」

 ごもっとも、まともでないから、人の事など考えず、つけ回し、嫌がらせをするのだろう。本人は、それを嫌がらせとも思っていないのかもしれない。

「うまい撃退法ってないんですかね」

「そんな方法があるんだったら、ひとみさんもこんなに悩みはしないよ」

 それも、ごもっとも。