僕の親は平和主義者だ。

 いつも、日本が平和であるのも、憲法9条のお陰だと言っている。

 幼い頃から耳にタコが出来るくらいそれを聞かされてきた僕が、平和主義者になるのは当然だ。

 僕が高校生になったとき、クラスに苛めっ子がいた。

 そいつは、身体がでかいのをいいことに、クラスのみんなを苛めて回っていた。

 なんの抵抗をしない者を苛めて回っていた。

 ある日、僕もそいつに殴られた。

 親が言っていたこととは違う、いつも平和を保っていてなにもしないのに、どうして殴られるんだ。

「なにもしていないのに、どうして殴るんだ」

 そいつの答えはこうだった。

「俺が殴りたいから殴った。殴られたくなけりゃ、俺より強くんるんだな」

 僕は、なにもしないのが平和を保てるわけではないと悟った。

 それからの僕は、親の反対を押し切って空手部に入った。

 必死で練習し、一年も経った頃には、そのいじめっ子よりも強くなっていた。

 それからさらに一年、誰も僕に逆らわないようになっていた。

 身を守るには強くなるしかない。

 今、僕はそれを痛感している。

 なにもしないで、自分も人も守れるわけがないと。