世の中、上には上がいる。

 それはわかっている。

 だが、俺より上がいるのは許せない。

 そんな奴は、これまでどんな汚い手を使ってでも叩き潰してきた。

 要は、勝てば官軍なのだ。

 絶対王者として君臨し、権力を握っておけば、逆ら者もいなくなる。

 仮に、そういう奴が出てきても、叩き潰すのが簡単になる。

 人間というやつは、権力と金と暴力に弱い。

 その三拍子が揃えば怖いものなしだ。

 今まではそう思っていた。

 まさか、権力に屈せず、金に流されず、暴力に立ち向かってくる奴がいるとは、思ってもみなかった。

 その、たった一人の人間のために、今、俺の立場は危ういものになっている。

 いくら叩き潰そうとしても、すんでのところで逃げられてしまい、思わぬところで逆種を喰らう。

 世の中には、こんな奴もいるのか。

 人間を舐め切っていた俺は、驚きと恐怖を感じている。

 そして、とうとう俺が潰される羽目になった。

 世の中、上には上がいる。

 生まれて初めて、その言葉を嫌というほど思い知った。