「お、これ、むっちゃ美味いやん」

 つい今しがたカレンと食事を済ませたというのに、悟はバイキング形式の料理を皿に盛って楽しんでいる。

「あなた、さっき食べたばかりでしょ」

 カレンが、呆れた目で悟を見る。

「それとこれとは別や、こんな美味そうなもんを見て食べへんかったら、作った人に失礼やろ」

「ものは言いようね」

 カレンが笑う。

 カレンもターニャも、狙いは生島だ。

 だが、生島には何人もの招待客が取り巻いており、その周りにはボディガードが十人ばかりいて、なかなか隙が見えない。

 ボディガードが銃を携行していることは、肩の下がり具合から、プロが見ればわかる。

 この会場にいる間は、生島を殺るのは不可能だ。狙うとしたら、会場から駐車場へと向かう途中しかない。

 カレンもターニャも、そう見て取った。

 オークションが始まって暫くして、生島がごくさりげない様子で、控室に入っていった。

「後は、任せた。ぬかるなよ」

 監視カメラに向かいそう言ってから、生島は駐車場へと続く隠し扉を開けて、中へ入っていった。

「サトル、あなたはここにいて」

 生島が控室に入っていくのを見たカレンは悟にそう言い置いて、これもさりげない態度で、生島の後を追った。

 カレンが控室に入ってから数秒も経たぬうちに、ターニャと桜井が入ってきた。

 三人が顔を合わせる。

「ここは、早い者勝ちといきましょう」

「いいわね」

 二人は宿敵と言ってもいい間柄だが、カレンもターニャも、ここは任務を優先することにした。

 どちらが生島を倒してもいいのだが、それでは二人のプライドが許さない。

どちらが生島を倒すかが、今は二人の争いだった。