狭い廊下は、二人並んで進むのがやっとだ。
「ジミーとフォスターは、ここに残って援護しろ」
「ラジャー」
二人の返事を聞いて、「行くぞ」と言って、ロバートが廊下に足を踏み出した。横に、リチャードが並んでいる。クリントンとハックマンが後に続き、最後にジョージが続く。
三人の遺体をまたぐとき、みんなは痛ましい顔をして一人一人の顔を見て通った。
なにも起こらず、五人は扉の前に着いた。
「開けるぞ」
ロバートが、そうっと扉を開けた。
中は廊下と違ってうす暗く、椅子が一脚のみ置いてあるだけだ。その椅子に、丸太のような腕を組んだ男が、ゆったりと座っている。
「よく来た」
金属のざらつくような声で、男が言う。男の顔には、残忍な笑みが浮かんでいる。
「劉か」
ロバートが、男に銃口を向けた。
この時には、ジミーとフォスターも来ていた。
七人が、椅子に座った男に銃口を向ける
「だとしたら?」
劉は、あくまでも平然としたものだ。
「死んでもらう」
劉の顔に浮かんだ残忍な笑みが、ますます広がってゆく。
「おもしろい、やれるものならやってみるがいい」
「撃て」
ロバートが命令するや、七人の銃が一斉に火を吹いた。
全弾、狂いなく劉の身体に集中したかと思われたが、劉は平然と座っている。
特殊部隊の隊員と劉の間は、透明な防弾ガラスで仕切られていた。何十発の銃弾が集中したというのに、ヒビすら入っていない。
「一旦、退却」
形勢不利と見てロバートが命じたが、扉はロックされていて開かない。
隊員達のいるスペースの天井から、煙が吹き出してきた。煙はみるみる充満してゆき、数分後には隊員達は床に転がっていた。
煙が消えてから、防弾ガラスがするすると上がる。
劉が立ち上がり、のっそりとした足取りで、倒れている隊員達の側に歩いていった。