海が、荒れている。

 まるで、私の心を反映しているように。

 私の勤める会社は、コロナ不況のあおりをまともにくらっている。

 倒産こそしていないが、仕事は減る一方で、このままではどうなるかわからない。

 そのため、休みも増えた。

 休みたいわけではないが、賃金カットのため、強制的に休まされるのだ。

 今日も休みなので、気分転換のために海を見にきた。

 私は、昔から海を見るのが好きで、海を見ていると心が和んだ。

 この海は、世界と繋がっている。

 海を見ながら、本や映画で見た異国を頭に描いていた。

 そうやって、子供の頃はわくわくした気持ちで、飽きずに何時間も眺めていたものだ。

 今日、家を出る時は快晴だった。

 だが、海や近づくにつれ、どんどん天気が悪くなった。

 そして、着いたときには、雨こそ降っていないものの、この荒れ方だ。

 海は、友達だと思っている。

 その海が、これほど荒れているのは、私に対する警告なのかもしれない。

 どんなことがあっても、平静を保て。

 きっと、海はそう言っている。

「わかった」

 私が言葉に出して言うと、これまでと違って嘘のように、海が凪いだ。