「ねえさん、いい度胸してるな」
ここは、大阪はミナミの繁華街。
といっても、人込みが絶えた深夜だ。
一目見て、その筋の者とわかる男五人が、一人の女を取り囲んでいる。
女の横には、背丈こそは高いものの、頼りなさそうな男が立っている。
五人のヤクザに取り囲まれて凄まれているというのに、女にも、その男にも、怯えた様子はまったくない。
それどころか、女は微笑を湛えており、男はやれやれという顔をしている。
事の発端は、二人が歩いているとき、前から道いっぱいに広がったヤクザ共が歩いてきた。避けようにも避けようはないが、避ける素振りも見せず、立ち止まることもなく、二人が悠然と歩いていたため、二人の前でヤクザが止まった。
で、二人に絡んできたという次第だ。
ヤクザ共は、まったく怯える様子も見せず、それどころかうすら笑いさえ浮かべている女に向かって、冒頭のセリフを吐いた。
「ちょっと、身体で教えてやろうか」
ヤクザの一人が言ったとき、残りの四人は路上に倒れていた。
言ったヤクザが、目を丸くする。
「どうしたの、身体で教えてくれるんでしょ」
嬉しそうに言うカレンに、ヤクザの顔が引き攣った。
こうして、今日もミナミの夜は更けてゆく。