時の流れは、誰にも止められない。
ならば、流れに身を任せるしかないのか。
そうやって、人は生きてゆくのか。
いつの世も、時の流れに逆らう者がいる。
それは、愚かなことなのか。
私は、そうは思わない。
時の流れを知らずに逆らっているのなら、愚かと呼んでもいいかもしれない。
しかし、それがわかっていながら、己の信念に従って逆らう。
それは、ひとつの美学だ。
土方歳三がそうだった。
私が入隊したのは、戊辰戦争の最中の会津だったが、彼は愚かではなかった。
「俺はね、俺の行きたいように生きるだけさ。後世でどう言われるかなんて、どうでもいいことさ。このまま薩長の好き勝手にさせていたんじゃ、徳川家の立場がなかろう。ひとりくらい、こういう馬鹿がいてもいいんじゃねえか」
土方は、そう言って笑っていた。
そして、その言葉通り、降伏を肯えんじることなく、一人で死んでいった。
私は、五稜郭までは行ったものの、そこまでの気持ちにはなれず、大人しく降伏組に加わった。
だが、今は後悔している。なぜ、土方と共に死ななかったのかと。
私の人生は、五稜郭で終わっていたのだ。