どうしようもない不安が、俺を襲った。

 俺の予感はよく当たる。

 これから、きっとよくないことが起こる。それも、とてつもないことが。

 しかし、俺の予感は外れた。

 なんと、宝くじの一等に当選し、十億円という大金を手中にした。

 俺は有頂天になった。

 十億なんて金は、庶民の俺からすれば途方もない金額だ。

 ましてや独り身の俺だ、誰に気兼ねなく金を使える。

 俺は即刻会社を辞め、その日から遊びまくった。

 豪華客船で世界一周もしたし、高価な時計やアクセサリーも買い漁った。

 使うまでわからなかったが、そんな使い方をしていると、十億なんてあっという間に使い切ってしまった。

 金持ちが身に付けているものが高価なのは、さらに金を生み出し、使っても尽きるこがないからだ。

 俺みたいに金を稼ぐ才覚のないやつは、使い切ってしまったらそれきりだ。

 ましてや、物の価値も知らず見る目もないので、多くの偽物を掴まされてしまい、売るときは二束三文だった。

 少しの間贅沢したお陰で金銭感覚が狂ってしまい、あくせく働くのが嫌になった俺は詐欺まがいのことを繰り返し、とうとう警察に捕まってしまった。

 やはり、俺の予感は当たっていた。