今死んでも悔いなしと思える人は、どれだけいるのだろう。

 多分、ほとんどの人がそうは思わないはずだ。

 とすれば、どれだけ多くの人が人生を無駄に過ごしているのだろう。

 志半ばで、まだまだやり残しているという人もいるだろう。

 しかし、大半はただ死にたくないからという理由だけで生きてはいないか。

 だとしたら、無駄なことだ。

 ただ死にたくないからで生きていて、なにもいいことはない。

 私は、もう還暦を幾つか過ぎた。

 運命論者でもなんでもない私だが、最近思うことがある。

 人は、なにがしかの使命を持って生まれてきたのではないかと。

 その使命を終えるまでは、なにがあっても死なないのではないかと。

 生死に関わる大事故で生き延びる者もいれば、ちょっと転んだだけで打ち所が悪く、あっけなく死んでしまう者もいる。

 たとえ志半ばで死んだとしても、それは誰かが引き継ぐことになり、その者の使命は終わったのだ。

 こんなことを思うのも、歳のせいだろうか。

 しかし、そう思うようになってから、別段死を恐れないようになった。

 というか、考えてみれば、死の恐怖を感じたことはない。

 死ねばいなくなる、ただそれだけのことだ。

 だから、生きているうちに出来る限りのことをする。それが使命だからだ。