金塊の強奪を企てた、十人の集団がいた。

 その集団は、学者もいれば警察官もいるし、プロの犯罪者もいればプロドライバーもいて、それぞれの分野で一流の人間が揃っていた。

これまでにも投資詐欺をしたり、企業を強請ったり、産業スパイで得た機密を売ったりと、殺し以外の数々の犯罪を犯しており、未だ正体さえ突き止められていない。

それは、十人の結束が固かったからである。

 ある銀行に、五十億の金塊が運ばれるという情報を得た集団は、それを奪うべく緻密な作戦を練った。

 その結果、まんまと金塊の強奪に成功した。

 あまりに巧妙な手口だったので、三億円事件同様、犯人は一向に割れないでいた。

 十人はほとぼりが冷めるまで、三年は金塊を隠し場所に寝かせておくことに決めていた。

 強奪から半年も経たぬうちに、一人が死んだ。

 警察は事故と断定したが、巧妙な殺人だった。

 それから半年の間に、ある者は自宅の火事で、ある者は強盗殺人で、またある者は交通事故などで、次々と仲間が死んでゆき、とうとう二人になった。

 これまで結束の固かった仲間も、五十億という大金に目が眩み、二人の裏切り者を出したのだ。

 その二人も、お互い相手を殺そうとして、相打ちに倒れた。

 そして誰もいなくなり、五十億の金塊は永久に人の目に触れることはなかった。