実るほど、頭を垂れる稲穂かな。
その言葉を、今こそ身に沁みたことはない。
俺はサラリーマン生活が嫌で、自ら事業を起こした。
その事業は図に当たり、みるみる会社は業績を伸ばしていった。
それに比例するように、俺は傲岸になっていった。
これまでの、使われる身の抑圧された生活から一転したのと、金回りがよくなったのとで、高級車を買い、高級なスーツや腕時計を見につけ、毎日高級クラブで豪遊を繰り返した。
そんな生活が続く度、俺の傲慢にますます拍車がかかった。
事業を起こせたのも、業績が伸びたのも、いろんな人たちの支えや協力があってのことだ。
最初は、そういった人たちに感謝していた。しかし、自由奔放な日々を過ごすうちに、そんな気持ちはすっかり忘れてしまっていたのだ。
そんな人間を、まともな人間は見放す。そして、そんな人間にはロクでもない連中が寄ってくる。で、そんな人間だから、ロクでもない連中を寄せ付ける。
気が付けば、おれの会社はがたがたになっており、とうとう破産してしまった。
驕ることなく、初心を忘れずにやっておれば、こんなことにはならなかったろうに。人間、調子がいときにこそ気を引き締めてやらなければならない。
勝って兜の緒を締めろ、だ。
俺は、初心に返って、もう一度出直すことにした。