いつのまにか眠っていたようだ。
窓から、薄陽が差している。
ゆうべは、遅くまで原稿を書いていた。
締切が近いのだ。
今書いているのは、ファンタジーマンガの原作だ。
元来夢想家の俺は、現行を書いている最中、作中の世界が現実かどうかの区別がつかなくなる。
ゆうべも原稿を書きながら、俺の頭は妖精の住む森をさ迷い歩き、魔物と戦いながら、お姫様を探していた。
で、いつ眠ったかもわからないというわけだ。
作画家の絵と、俺の物語がぴったりとマッチしたのか、このマンガは今売れに売れている。いくら増刷しても追い付かないくらいだ。
原稿を書くにあたって、俺は頭を悩ませたことはない。
俺の頭が勝手に夢想するのを、字で書き表すだけだからだ。
だから、これから先の展開がどうなるのか、俺にもわからない。
読者よりも、俺の方がどきどきしているくらいだ。
これで決して少なくない原稿料と印税が入ってくるのだから、まことに申し訳ない気持ちになる。
だが、なんとゆうべの夢想で、物語は終わってしまった。
困った、これからは、俺の頭で考えなければいけないではないか。