正林先生のIPランドスケープ連載記事の最新号が出ました。
前回の「特許情報でM&A先・アライアンス先を探すことはできるのか?」では、タイトルの通り特許情報で買収先や提携先を探すことができるのか?という点について説明しましたが、今回はその続きで正林先生の連載内容から買収先や提携先を探す際の分析フローを考えてみたいと思います。
今回の連載記事では、FinTech×不動産領域を対象にして、
- スタートアップ企業データベースで、対象領域のスタートアップを抽出
- 抽出した企業の特許出願を調べて、対象領域の特許分類で絞り込み
- 何年に出願しているのか?どのような技術に出願しているのか?を可視化
- 対象領域全体の中に占めるスタートアップ企業の強み・弱みを分析(連載記事ではこの詳細までは触れていません)
というフローで分析されていました。
今回のミソは
最初にスタートアップ企業データベースで候補企業を抽出する
というところにあるかと思います。まずは企業情報、マーケット情報からアプローチして、後で特許情報を活用するというパターンです。
もう1つのアプローチとしては、
- 対象領域の特許母集団を形成
- 母集団の統計解析マップ(時系列推移マップ、ランキングマップなど)から候補企業を抽出
- スタートアップ・ベンチャー企業ですと「出願が少ない」、「最近出願している」という特徴があると予想されるので、ある程度まとまった出願件数がある会社(おそらく大手企業)ではなく、ランキング下位企業や直近出願が出ている企業に注目
- 抽出した企業の強み・弱みを把握
- 特許面での強み・弱みだけではなく、企業情報などからビジネスモデルや事業性、成長性、ベンチャーキャピタルからの出資状況なども加味
という特許情報ドリブンの方法もあります。
スタートアップ企業を抽出するという点では、今回の正林先生の連載記事で取ったような企業情報・マーケット情報ドリブンでのアプローチの方がより好ましいかと思います。
その理由としては、前述の通り、
- スタートアップ・ベンチャー企業は特許出願していたとしても出願件数が少ない(と思われる)
ので、数千件の母集団から候補企業を洗い出すよりは、ある程度狙いを定めて特許を調べるアプローチの方が効率的だからです。
とはいえ、このアプローチをとる際は、最初の企業情報・マーケット情報での候補企業の抽出を念入りにやっておかないと、そもそも特許情報を調べる前に漏れてしまう、というリスクがありますので、その点は注意が必要です。