猫の後ろ姿 2268 危機における人と芸術
11月7日朝7時のNHKテレビニュースで、空爆下のガザで生きる20歳の画家を志す青年のことを知った。
その青年から7枚の絵がネットを通じて日本に届いた。空爆の様相を描いたその絵の線は簡略で、色彩はない。
一年前の絵は鮮やかな色彩でサボテンが描かれている。トゲの生えたサボテンは、
ガザから出られない痛みと苦しみを現している。白い羽の生えたサボテンは飛び立とうとしているが、根っこがそれをつなぎとめようとしている。
この絵には色彩と象徴がある。しかし「7枚の絵」には色彩もなく、象徴的表現もない。現実の様相が端的にそこに描かれている。
「なぜ絵を描くのですか」という問いに彼は
「アートで私のメッセージや私の声を世界に届けたい」と答える。
最後に彼はこう言う。「私は傍観したくないのです。」
危機的状況は、そこに生きる人間を試す。芸術もまた危機に試される。
現在の日本に生きる僕等もまた試されている。
どう生きるか。なにをつくるべきか。