猫の後ろ姿 2267 沖縄・名護 宮城与徳の絵を観る
宮城 与徳(みやぎ よとく、1903年~1943年)
洋画家、アメリカ在住中に左翼運動に参加する。帰国後、ゾルゲ諜報団に参加。 ソ連のスパイとして、いわゆる「ゾルゲ事件」に関与して逮捕、拘留先で病死した。
宮城与徳の故郷、沖縄・名護市の名護博物館に作品が所蔵されている。
今回の名護訪問は、新たに寄託された宮城与徳作品3点(月光像・牡丹花・やまなみ)を拝見することを目的とした。
この3点は尾崎秀実が宮城から直接購入した物であり、秀実の娘・楊子が保管し、名護博物館に寄託したもの。尾崎秀実と宮城与徳の関連を知る上でも重要な意味を持つ3点である。
宮城与徳 月光像
宮城与徳 やまなみ
宮城与徳 牡丹花
特に興味深いのは「牡丹花」。作品裏に、楊子によるメモが貼り込まれていた。
楊記
宮城与徳氏 作
1938~40年頃 宮城氏より購入
尾崎の家(祐天寺)の茶の間にかけたが余白
が気になると尾崎が何げなく口にすると
居合わせた西園寺公一氏が墨をすらせて
即座に木下利玄の歌「牡丹花は咲き定
まりて静かなり花の占めたる位置の確かさ」
と書かれた さすが公卿の末と一同感嘆。
宮城与徳・尾崎秀実・西園寺公一というゾルゲ事件の三人の主要人物の姿がみえてくる。
今後も、宮城与徳というひとりの画家を志した沖縄人の生きようを見つめ、芸術と政治のかかわりの意味を考えていきたいと思う。