猫の後ろ姿 2057 小早川秋声 「国之楯」 | 「猫の後ろ姿」

猫の後ろ姿 2057 小早川秋声 「国之楯」

 

 

  小早川秋声の作品展が東京で開かれている。明日まで、東京・京橋の「加島美術」にて。
「国之楯」がでているとのこと、これを見逃すわけにはいかない。
 図版で最初にこれを見た時には、衝撃を受けた。横たわる軍人の顔の部分に日章旗の赤丸がかかっている。戦死者の鮮血を思わせる。
 随分以前、NHKの番組の中でこの絵が取り上げられたことがある。
下の画像で分かるように、制作当初、横たわる人物の身体の周りには小さな桜の花がたくさん描きこまれていた。戦死者を花で飾るこの表現は、作品名「軍神」にふさわしいと小早川秋声はかんがえたのかもしれない。
 しかし、発注主である軍部は、小早川秋声のこの絵の受け取りを拒否した。日本の戦争画は日本人の戦死者の姿を描かない。死ぬのは敵国民ばかりだ。
 死者を荘厳する桜花は黒く塗りつぶされて、タイトルも「国之楯」とかえられた。深い闇の中に横たわり顔から血を流し続けるこの絵は、美化された死ではなく、死そのものを描いている。観る者にものを思わせる力がこの絵にはある。
 この絵は現在、取県日南町立美術館に寄託されている。東京での今回の公開は明日まで。
ぜひ。