風俗嬢の職業病(声編)。
声がね。
出ません。
もうすっかり掠れちゃって、
張りがなくて細くなっちゃって
(それがいいという人もいるけどね)。
酒もそれほど飲みません。
煙草も1mgに変えました。
カラオケだってやりすぎてません。
原因をオシゴトだと、
決め付けていいですか?
興醒めするほど大声で
「ああ~ん、あん、あん、いく~ん」
なんて叫んじゃいません。
あたしとしたことがオシゴトで
なりふり構わず燃えちゃったときや、
激しく腰を打ち付ける野獣客に限って、
声がつぶれる事なんて恐れずに、
隣の箱の客が引くことなんて恐れずに、
(間違いなくある)隠しカメラの音声が
乱れることも恐れずに、
思うが儘に雄叫びは上げました。
胃の調子が悪いとき
胃カメラを飲んだら、
カメラが喉を通る時、
医者が言いました。
「小さいけどポリープがありますね」
あたしの美声を返してください。
↑
自業自得だと笑ってくださいな。
同情や説教なんていらない。
「どうして君みたいな人がこんなところにいるの?」
だとか、
「目標を達成したら早くこんな仕事はやめてね」
だとか、
「いつまでも続けられる仕事じゃないんだよ」
だとか・・・。
そんなにお気をつかって頂かなくても全然結構なのにね。
お愛想とか説教染みたこととか・・・。
いつからかあたしの身内にでもなった気分なんだろうか。
ま、言うだけだったらただだからね。
風俗嬢は、何かしら深い問題を抱えているものだと
信じ込んでいる客は多い。
いや、そう思いたいだけなのかもしれない。
別に悩みや不安を抱えているのは風俗嬢ばかりではないのに、
まるで、社会の底辺の人間に同情したつもりになって、
そうして自己満足の悦に入ったりしてる。
そんな感傷に浸ることで何かを得ているのだとしたら、
あたしは充分役割を果たしたような気にもなれる。
同情されたり、心配されたり、いろんなものを押し付けられたり。
オシゴトしてる中で、一番排除したい事柄なのに、
とってもとっても人のいい勘違いで、ほじくり返して露呈させてる。
なのに、それに全く気付いてないというのはどういうことだ。
「どのくらい必要なのかわからないけれど、
僕が用意できる金額だったら
今すぐにでもやめさせてあげられるのに」
と泣きながら言った客がいた。
心底鬱陶しくて、今すぐ箱から叩き出したい気分だったけど、
あたしは優しいからそんなことしない。
「大丈夫よ。あたしこの仕事そんなに嫌いじゃないから」
なんて心にもないこと言って強がって見せて、
「僕は僕の出来る限りで、ずっと君のことを応援するよ」
なんてことを言わせてしまうのだ。
人は
自分より可哀想な人を見ると幸せを得た気になったりするからね。
彼には、あたしの心の中なんて推し量ることは出来ないだろう。一生。
あたしはあたしという人間を可哀想だなんて思っちゃいないのだから。
少なくとも、お前よりは可哀想ではないと思っちゃってるわけだから。
お食事会。
あたしの店は完全個室待機なもんで、
他の姫とお知り合いになる機会は月に一度のお食事会くらい。
お食事会の店に向かうと、スタッフの対応は笑っちゃうほど丁寧で、
姫たちはいつにもましてかしこまっちゃって、なんだかおかしな空気。
姫はおっそろしく綺麗な子ばかりで、あたしなんて萎縮しちゃって
ちっちゃくちーちゃくなってる。
ほーっそいのにおっぱいBOM¦・。・!とか、
どう見てもモデルでしょ?って子とか、
銀座のNO.1でも全然おかしくないって子とか、
君のいる場所はここじゃないわよ・・・
って教えてあげたくなるほどの姫とか。
(HP見れば納得!だけど・・・んなことしたらバレるんで無理だぁあ)
初めて月の指名NO.1ってやつになっちゃったとき、
「なんであの子が?」・・・的なざわめきが沸き起こり、
「あー、どうもすいませんねぇ、あたしなんかで」
ってなへたれ顔で祝いの商品券だかなんかを
へこへこ取りに進み出たのだった。
「お客様からは、明るくて楽しいと評判ですよ」
なんて、紹介されちゃったりなんかして、
「あー、どうせやるなら楽しまなきゃソンだと思ってー」
とか言っちゃってヒンシュクかったり、
「だからお客様も楽しまれてるんですね」
と返されて、
「あー、どうもすいませんねぇ、3枚目な感じで」
なんてすねちゃったりするわけだ。
入店直後、店があたしになんて期待してねーことぐらい感じていた。
服着たまま採用になったけど、あたしの薄っぺらい裸体見て、
オーナーも専務も言葉失ってたしな。
ひしひしと感じていたけど、感じないふりして、
突っ走ってやりましたよ、あたしは。
美女ばかりのお食事会から帰ってきたら「自信」というものを
うっかり店に忘れてきたかのように、
すっかり凹んでたりもたまにする。
あたしにだってやる気ねー日もあるし、
病み病みで部屋出るときは両足に鉛の玉繋がれてんじゃねーの?
って気分の時もあるし、
客をめっためたに撲殺したくなる時だってある。
けど、薬飲んででもユンケル3本まとめて飲んででも、
ちゃんと店に出て、最高の姫演じて、客を満足させるのは、
もう残り少ない時間に向けるプロ意識からに違いない。
おじ様と二十歳のあたし。
昔おじ様と、金の絡まないセックスだけの付き合いをしたことがある。
あたしは二十歳より前で相手は45歳くらいだったかな。
金の絡まないといっても、普通に付き合っていたわけだから、
旅行とか、値の張るプレゼントとか、たまに渡されるお小遣いとか、
そういうのは、駆け出しの大学生風俗嬢にとっては
美味しかったのかもしれない。
なんでまたそんな・・・・
と思われるかもしれないけれど、
楽しかったのだ、おじ様とのセックスが。
もうすでにセックスをオシゴトにしていたときだけれど、
オシゴトは風俗の割りにノーマルなプレイばかりで、
そうでないおじ様の新鮮なセックスに
あたしは興味津々だったわけだ。
小道具や如何わしいオクスリ使ったり、
SMクラブで刺激を貰ったり、
おじ様の友達とその彼女の戯れを見たり見せたり入り乱れたり、
空港のセキュリティーチェックで
いろんなバイブを手提げ袋に入れてピンポンならして
バイブセットをテーブルに広げたり、
若い男性スタッフのいる薬局に
浣腸とローションとコンドームとボラギノール注入軟膏の
4点セットを買いに行かされて、
そのスタッフの反応を笑い合うというような、
下品な遊びがたまらなく楽しかったのだ。
『セックスとマッサージは似てる』と豪語して、
セックスの前に全身をマッサージしてくれるかいがいしさとか、
親との揉め事に上手い対処法をアドバイスする大人の裏技とか、
豪華な食事やオシャレなホテルとか、
そういういろんなものに興味を示すお年頃は誰にでもあるはずだ。
おじ様にはいろんなことを教えてもらって、
その後のあたしのオシゴトに、かなりの影響を与えた。
オシゴトの前に必ず浣腸をするのは不測の事態に備えるためで、
浣腸に抵抗を覚えなくなったのも
おじ様によくやられたからだったりする。
汗だくになってオシゴトしなくても、
体を疲労することなく効率の良いサービスで、
しかも指名を取れるようになったのも
おじ様直伝のテクニックのおかげだったりする。
いつも斜めに構えてて店長とも喧嘩ばっかしてたあたしだけど、
上手に店と付き合うことで、オシゴトがやりやすくなると知ったのも、
おじ様の助言だったりした。
おじ様とのセックスライフは楽しかったけれど、
それでも終わりは来た。
どんなに興味引かれる相手だって、遊びだって、
いつかは飽きる時が来るのだ。
おじ様はそんなあたしに先に気が付いて、
見たこともないようなでっかいバイブを
『忘れ形見だ』とあたしに渡して、
『俺に解放されたくなったら、
(あたしはいろんな意味でおじ様に解放された)
いつでも連絡して』
とだけ言い残して去っていった。
何かあると相談したりしていたけれど、
近頃は何もないので、連絡は取っていない。
でも彼の活躍をいろんなところで見ることは出来る。
今でもあぁやって若い女の子をたぶらかしているのだろうけど、
あたしがちっともたぶらかされた気がしてないのは、
あたしはおじ様に利用されているふりをしながら
実際は最大限に利用して、
何十歩もステップUPしたと自負しているからに違いない。
書いてるんでしょ。
近頃、よく対戦しちゃう客との会話。
「HPとか持ってるの?」
「HPはやってないけど、ブログは書いてますよ」
「やっぱりね。お客さんの悪口とか書いてるんでしょ」
「いや、あたしはそういうの書かないんです」
「またまたぁ。書いてるんでしょ」
「書いてないですってぇ」
「僕のことも書いちゃうの?書いちゃってよ」
↑
書いちゃいました。
「書いてないですってばぁ」
「お客さんのこと毒舌でけなしてるんでしょ」
「いや、だから書いてねぇーってばよ!!このぼぉけが!」
↑
とは言わないが。
あたし、書いてないよね?あまり。時に書いても毒づいてないでしょ。
というか、基本的にあたしは愚痴とか文句を言わない人間のようで、
「あぁ、ここで言いたいこと言っちゃえば楽になんのになぁ」
って思うことはしばしば。
溜めに溜め、時に大爆発(自爆)起こすけど。
それでなくても、客ネタ書くと、
「これ俺でしょ。訴えるぞ!」と脅されそうで怖いじゃん。←超気弱
ということだけでなく、あたしのブログって、
『あんな客こんな客』っていう主題でもないしさ。
時にネタにしたくて仕方ない不思議ちゃんな客もいるけれど、
それでも、ぼかして書く程度。
元々の趣旨が違うんでございます。
世の中にはいろんな人間がいるもんで、
いろんな人間たちにいちいち興奮してたらこのオシゴトやってられません。
どちらかと言えば、
どうしてもネタにしなくてはならなくなるほど、
あたしを掻き乱してくれる客、大募集!!