〜支払い続けた年月と、これからの道具選びについて〜

 

経理まわりの整理をしていて、

「ソフトウェア利用料」の行に目が止まったのが、

この記事を書きはじめたきっかけです。

AdobeとMicrosoft。(それ以外にもある。。。)

この二社にお願いしてきた月々のサブスクリプション料を、

改めて一覧にして眺めてみると、なかなかに立派な固定費になっていました。

良い機会なので、ここらで一度、

うちのサブスクリプションをきれいに整理してみます。



一、長年払い続けてきた「光熱費」

うちの会社は、制作まわりではAdobe、

事務まわりではMicrosoftにお世話になってきました。

PhotoshopやIllustratorのCreative Cloud、

WordとExcelのMicrosoft 365。

どちらもいわば「光熱費のようなもの」です。

サブスクが業界の標準になった当初は、

「買い切りより合理的だ」という声が主流でした。

最新版がずっと使える、複数の端末で使える、

バージョンアップのたびに十数万円という時代よりはマシだ

——確かに一理ありました。

ただ、実際に払い続けてみると、違和感が出てきます。

使う月も使わない月も、請求額は同じ。

ソフトは資産にならず、解約した途端に何も残らない。

「所有していた時代」にはなかった、静かな不安のようなものです。

そして何より、単価の積み重ねが想定よりずっと大きい。

これが年単位で続くと、れっきとした経費の塊になります。



二、手頃な代替が増えてきた

転機は、ここ数年です。

デザインならCanvaやAffinity。

写真のレタッチなら無料のPhotopea。

動画ならDaVinci Resolve。

オフィススイートならGoogle WorkspaceやLibreOffice。

生成AIの進化も相まって、

「プロ用の道具でなければできない」とされてきた仕事のかなりの部分が、

ずっと安い道具でこなせるようになってきました。

相場を並べると、その差は歴然です。

デザイン統合環境    Adobe Creative Cloud Pro/月9,080円(税込)   

          Canva Pro/月1,180円 Affinity/無料
オフィススイート    Microsoft 365 Business Standard/月2,000円台 

         Google Workspace Starter/月800円前後

         LibreOffice/無料
※2026年10月時点での一般価格の目安です。

プラン構成・契約形態・キャンペーン価格などで変わるため、

正確な金額は各社の公式ページで確認してください。

かつて「コンプリートプラン」と呼ばれていたAdobeの統合契約は、

2025年に「Creative Cloud Pro」へと衣替えして生成AIの機能を積み、

実質的な値上げとなりました。

一方で、Canva傘下のAffinityは2025年10月末から全機能が無料。

「プロの道具がタダで手に入る」という状況は、

五年前には想像もつきませんでした。

「8割の仕事は、安い道具で足りる」

これはもはや贅沢な感想ではなく、前提になりつつあります。

だから方針はシンプルです。

変えられるものは、変える。

ライセンスをひとつ減らすだけでも、

年間で相当な金額がそのまま手元に残る時代です。



三、それでも「変えられない」もの

とはいえ、全部がそう簡単にはいかないのが実情です。

足枷は、はっきりした形で存在します。

互換性。

取引先とのやりとりは、いまだにPSD・AI・Excel(.xlsx)が共通言語です。

代替ツールで作ったデータを納品したら、相手の手元で崩れていた

——そんな事故が一度でも起きると、「やはり本家で」という話に戻ってしまいます。

業界標準であること自体の価値。

「Photoshopが使える」は履歴書に書ける共通言語ですし、

外注先や新入りのスキルも、この前提で回っています。

道具を変えるというのは、アプリを入れ替えるだけでなく、

関係する人の働き方ごと変えるということです。

積み上げてきた資産。

フォント、プラグイン、マクロ、テンプレート。

年月をかけて育てた「道具まわりの資産」は、

乗り換えた瞬間にゼロへ戻ります。

こうして並べてみると、うちの整理は「乗り換え」ではなく

「減らす」になりました。

使用頻度の低いライセンスから外し、

兼任で足りる部分は安いほうへ寄せ、

それでも残る中核だけは本家にお金を払う。

潔い割り切りです。



四、この先どうなっていくのか

この流れ、この先どうなるでしょうか。

二つの方向から変わっていきそうに思います。

ひとつは、課金の単位そのものの変化です。

Adobeは統合契約に生成AIの機能を載せて価格を見直し、

Microsoftも2026年7月に商用スイートのパッケージと価格の改定を進め、

Copilotを組み込んだ新しい契約体系へ移りつつあります。

サブスクの中身が「アプリの利用料」から

「AIに任せる仕事の量」へと移りかけているのです。

そうなれば、比べるべきはアプリの価格そのものではなく、

「この道具はどれだけの仕事を引き受けてくれるのか」という問いになるのでしょう。

ふたつ目は、「無料」という基準線の復活です。

Affinityの無料化はその象徴で、

プロ級の道具がゼロ円で手に入るのが普通になれば、

高額なサブスクは「本当に必要な人だけが払うもの」になっていきます。

選択肢が増えるほど、払う側のハードルは上がる。

値上げが続くほど、この圧力は強まるはずです。

ただ、業界標準の座はそう簡単には動きません。

WordやExcelがそうであるように、

「みんなが持っているから価値がある」という構造は、

道具の性能だけでは崩れません。

崩れるとしても、それは使い手が世代交代するときです。

だから、うちの今後のルールはこうしました。

契約更新のタイミングで、

必ず「このライセンス、この一年で何回使った?」と自問する。

変えられるものはその場で変え、

変えられないものは「なぜ変えられないのか」を言葉にして残しておく。

それを繰り返していれば、

いざ「変えられる日」が来たときに、すぐに動けるはずです。



おわりに——支払う理由を言葉にする

サブスクリプションの整理は、単なるコストカットではありませんでした。

ひとつひとつの料金に対して「払い続ける理由」を言葉にしていく作業です。

「なんとなく便利だから」という理由が減るほど、

残った道具との向き合い方は誠実になります。

 

 

 

ここも高くなったよね。。。