UNRWAへの資金拠出停止が意味するもの | ブロッギン・エッセイ~自由への散策~

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド,ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば,水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬編『証言 水俣病』)

 重要なことなので,何度もここに書くのだが,日本政府がUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への資金拠出の一時停止を決めた。前回記事の最後でも書いたように,これはパレスチナでのジェノサイドに加担するものだ。UNRWAの活動資金の枯渇はパレスチナ住民の死に直結する。長年UNRWAを敵視してきたイスラエルにとっては,それが目的なわけで,UNRWA職員がハマスに関与していたとするイスラエルのプロパガンダを真に受けて資金拠出を停止した欧米諸国や日本は,ジェノサイドの暴力に手を貸しているのも同然なのだ。直ちに資金提供を再開しろ!

 

 そんな由々しき状況の中で,山本太郎や大石あきこらのれいわ新選組がUNRWAに100万円を寄附した。「ジェノサイドに加担するな」という私たち市民の思いを汲み取ってくれたかのように,国会議員数名の弱小政党が日本政府を批判するとともに,寄附までしてくれた。山本代表は記者会見で「政府の意思がこの国のすべて(の市民)を代弁してるわけではない。パレスチナと連帯してジェノサイドを止めるんだという気持ちを示したい」とコメントしている。彼の政治家としての姿勢というか見識が表れている。是非,下の記者会見の動画(ダイジェスト版)を観ていただきたい。

 

 

 もともと私は主に経済政策の面でれいわ新選組を支持していたのだが,外交や国際政治の面でも理性的でまともな政策判断をしている。掛け値なく支持できると感じた(唯一賛同できないのは党名だけだ)。国政政党の中で最もお金のない政党が100万の寄附をしたのに,他の野党に同様の動きは見られない。まあ,選挙で票にならないからだろう。自民党の派閥の裏金作りも結局は選挙に勝つためであって,それ以外のことは彼らの眼中にはない。選挙に勝つためなら裏金でもカルト教団でも何でも利用する。バカバカしい限りだが,この際,思い切って自民党の裏金議員を免罪するのと引き換えに,裏金の全額を自民党がUNRWAに寄附するくらいのことをやったらどうか。

 

 つくづく日本の政治家には選挙のことしか頭にない選挙屋,政治屋しかいないなあと思う。世界や未来の社会を見通したステーツマン的な政治家が出てくることを望むのだが,れいわ新選組の議員はステーツマンに近いのではないかと思う。

 

 れいわ新選組の声明には次のような一節がある。資金拠出停止の意味を正確に理解しており,パレスチナ難民の帰還を支援するという国際社会の責任をしっかりと踏まえている。

 

資金拠出の停止は、パレスチナ住民への集団懲罰であり、 ジェノサイドへの加担であり、ICJの決定(ジェノサイド防止の仮処分)の本旨に逆行するものであり、あってはならない。

UNRWAの1万3千人いるとされる職員の中に、ハマスに加担した職員がいようと、
イスラエルに加担した職員がいようと、
それがUNRWAの組織本体への資金停止の理由にはならない。

 

 こういうれいわ新選組のメッセージと行動は,たとえ選挙の票にはつながらなくとも,中東をはじめ国際社会からの信頼と評価を間違いなく集めるだろう。これが本来の政治家のあり方であり見識というものだと思う。

 

 今,ガザで進行しているジェノサイドを許し,まして加勢さえするならば,イスラエルの暴力を見た世界の支配者たちは,自らの統治に不都合な民族や集団を抹殺することは決して非人道的なことではないのだと自己正当化するだろう。そして世界は,西洋近代の植民地主義を精算できないままイスラエル化していくだろう。ここにパレスチナ問題はちゃんと解決する必要がある。

 

 こういうパレスチナ問題の重要性を,れいわ新選組はよく分かっている。だから,パレスチナ支援を訴え,寄附までした。これは,国際的に意義ある行動だ。それに対して,他の政党はパレスチナ問題の重要性をよくわかっていない。パレスチナ問題よりも裏金作りや選挙対策の方が大事なのだろう。

 

 中東政治が専門の酒井啓子さんが,『現代思想』最新号で次のように書いている。皆でこの危機感を共有したい。「無制限の暴力が支配する世界を目撃」しないために・・・

 

ガザで進行していることは,我々が放置してきた植民地主義の最終形態であり,それに終止符を打たないことには,非人道と規範の欠如が国際社会に蔓延,定着し,我々はこれから無制限の暴力が支配する世界を目撃することになる

(『現代思想』2月号p,56)