イスラエル化する日本 | ブロッギン・エッセイ~自由への散策~

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド,ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば,水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬編『証言 水俣病』)

 前回記事で大石あきこさんの国会質問の動画を上げたのだが,大石さん以外に,はっきりとイスラエル批判の立場に立って意見を述べている国会議員はいるのか,と聞きたい。共産党も結局「どっちもどっち」論で,イスラエルもハマスも悪いという話になっている。今,ガザやヨルダン川西岸で起こっている事態がナクバから続く民族浄化であること,イスラエルによる一方的なジェノサイドであることを共産党はよくわかっていない。

 

 国連安保理では即時停戦を求める決議がアメリカの拒否権発動によって否決された。国連総会では即時停戦決議案が採択されたが,アメリカはイスラエルとともに反対している。アメリカはパレスチナでの民族浄化を容認した,というか,そういう国際犯罪への積極的な加担を決めたということだろう。これでアメリカの国家としての本性が明らかになった。安保理は繰り返し停戦を求め続けるべきだし,日本政府はアメリカに断固抗議すべきだ。また,日本の国会でも即時停戦の国会決議を今すぐ全会一致で可決すべきだ。それができないなら,自民党キックバック議員と一緒に全員,議員辞職した方がいい。

 

 日本にとってパレスチナ問題は,どこか遠い地域で起こっている,日本とは全く関係のない問題として受け止められてきた。それが、無関心でいて良いという国会議員の態度になって表れているのだろう。イギリスの三枚舌外交がパレスチナ問題という厄介な国際問題の種をまいたことはよく知られているが,実は日本もこれに深く関わっている。

 

 前回記事で私は,第一次世界大戦後にパレスチナはイギリスの委任統治領となり,その委任統治時代にナクバの先駆けになる虐殺がイギリスによってなされたことを書いた。実は,このイギリス委任統治を決定したサン・レモ会議に日本も第一次大戦の戦勝国の一員として参加しており,そこではアラブ地域の分割決議と同時に,ドイツ領南洋諸島のミクロネシアを日本の委任統治領とすることを決議した。アジア太平洋戦争につながる日本の南方進出は,パレスチナ問題とリンクしていたのである。

 

 日本はパレスチナ問題に無関係どころか,イギリスなどの欧米列強とともにパレスチナ問題の種をまいた当事者なのである。その責任を顧みず,パレスチナ和平に無関心であるだけでなく,アメリカとともにイスラエル支持の立場をとっている日本の政府や国会は,無責任も甚だしいというか本当に許し難い。

 

 戦後しばらくの間,日本は,石油の確保という事情もあって,イスラエルに一方的に肩入れすることなく,パレスチナを含めてアラブ諸国ともバランスをとった外交を展開していたが,日本が原発依存を強める中で,国のスタンスはイスラエル寄りにシフトしていく。9.11以後は,アラブ・イスラム諸国と対立するアメリカがイスラエル化していくのに引きずられて日本もイスラエル化していく。特に安倍政権の下でイスラエル寄りのスタンスは顕著となり,経済面や軍事面で日本とイスラエルとの関係が強化されていった。

 

 安倍は2015年に企業関係者を200名以上連れてイスラエルを訪れている。その目的や,誰を連れて行ったかなど詳細はよくわかっていないが,おそらく軍事・インテリジェンス部門を含めたハイテク産業での連携強化が図られたのだろう。日本の軍事大国化の背後にはイスラエルという国家が潜んでいることを見逃してはならない。

 

 前回も書いたように,ユダヤ人が問題なのではない。シオニズムが生んだイスラエルという国家の性格が問題なのだ。イスラエル国家に対する批判は,反ユダヤ主義でもレイシズムでも何でもない。パレスチナで民族浄化を進めるイスラエル国家を批判しているのだ。この民族浄化は1948年のナクバから続いており,そのナクバをお膳立てしたのが第一次世界大戦後の委任統治であったとすれば,未だ第一次大戦は終わっていないということになる。

 

 第一次大戦やヨーロッパの文脈を外して,イスラエル・パレスチナ問題は理解できない。反ユダヤ主義やホロコーストという負の歴史を真の意味で乗り越えていくためにも,イスラエルという国家の性格・あり方は批判的に問い続けていかねばならない。第一次大戦に参戦し,その戦後処理に深く関わった日本もまた,その責任を自覚して,もっとパレスチナ問題に積極的にコミットし,イスラエル批判の立場を打ち出すべきだ。そして私たち市民も,

 Stop Genocide in Gaza & West Bank !! 

と声を上げ続けよう!沈黙,無関心は虐殺に加担することだ…