抗体検査しよッ!~日本人はコロナの免疫があるのか~ | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


 イギリスが大規模な抗体検査に乗り出すようだが,このイギリスの動きは注目すべきだろう。私は,新型コロナ対策においてイギリスは「集団免疫」路線から「社会封鎖」路線へと方針転換したものと思っていたのだが,イギリス在住の医師・小野昌弘さんの記事(「英政府の対コロナウイルス戦争の集団免疫路線から社会封鎖への「方針転換」と隠れた戦略」)を読むと,どうもそんなに単純な話ではなかったようだ。イギリスはしたたかな国だ。ポリス・ジョンソンも単なるアホ首相ではなかったということだろう。

 今回の「コロナ・ニューディール」とも言うべき抗体検査の大規模実施は,集団免疫路線が今も放棄されていないことを意味している。もともと集団免疫は出口戦略として考えられていたということだろう。現在のデータに基づく数理疫学の手法で,感染が終息する「集団免疫」の成立時期を推測できるが,それを根拠に,移動制限や営業停止など社会的に著しく負荷がかかる政策のメリットとデメリットを比較考量し,そうした封鎖政策をいつ解いたらよいかの出口戦略を立てることができる。イギリス政府は,おそらくはこうした集団免疫による出口戦略に基づいて,思い切った社会隔離政策を打ち出したのだろう。だから,これは必ずしも路線変更とは言えない。「集団免疫」路線については国民の多数を犠牲にするとして各方面から批判が殺到したが,ジョンソンはこの路線を捨てて,「社会封鎖」路線へチェンジしたのではない。大きな戦略の中での戦術変更というか,集団免疫という戦略を基盤にした政策の具体化と見るべきだろう。
 ※例えば基本再生産係数が2.5(1人が2.5人に感染させる)なら,終息には英国全体の60%の人が感染し免疫を獲得することが必要となる。もし50%が免疫をもっていた場合,残りの10%が免疫を獲得するまで,緩やかに感染を拡大させることになる。この集団免疫が成立するまでは,どれだけ強力な封鎖政策をとったとしても,それを解除すればいずれ再燃する。したがって,ウイルス流行が終息するのは,集団免疫が成立した時と考えるのが科学的に妥当な考え方になる。

 そして今回始めようとする国民的規模の抗体検査も,集団免疫戦略の重要な一環として出てきたものだ。ある程度感染が蔓延してきた今日のような状況では抗体検査(血清学的検査)が有効になる。そこでイギリス政府は,この在宅検査キットを350万人分用意し,国民に配布する予定で,在庫はさらに増やすという。

 これはウイルス遺伝子の存在確認をするPCR検査とは違って,個人のコロナウイルスに対する免疫状態(IgGとIgM)を調べるもの。血糖値の検査キットみたいに,指先からの少量の血液で検査ができるキットで,値段も安い。イギリス政府は,これを国民全体で実施して集団免疫状態を調べようとしているわけで,イギリスの対コロナ戦略において重要な位置を占めている。国民全体の免疫状態を調べ,それをデータベース化して,社会封鎖をいつ解除したらいいかの出口戦略に役立てようとしている。抗体検査を広くやって,免疫を獲得しているとわかった人は,社会に出て働いてもらえばいい。陽性であれば外出・移動をしばらく自粛する。感染状況に応じて政府が適切な対策を取れるようになるのみならず,医療崩壊を防ぐことにもつながるし,経済へのダメージも最小限に抑えることができる。今やイギリスは国家戦略として集団免疫状態を調べられる体制を築こうとしている。実に戦略的で,プラグマティックで,かつ冷静な危機対応だ。このようにデータやモデルに基づいて長期的な戦略を立て,それを状況に応じて綿密に政策に落とし込んでいく――これが一つの国家のあるべき形なのかもしれないと思った。

 一方で,無計画で即興的な対策しか打ち出せない日本は,イギリスよりも一周も二周も後れているような気がする。日本でも,共産党の小池晃が要求しているように,今や抗体検査を広く実施すべき時期だろう。だが,長期戦略も合理的思考も全くない日本政府に期待するのは無理かもしれない。何とか自治体の権限で実施してほしいと思う。ドライブスルー方式のPCR検査よりも,費用もリスクも少なく,今すぐにでも実施できるはず。厚労省・感染研はやりたがらないだろうが,今こそ自治体首長の判断が求められる時だろう。おそらく地域ごとに免疫状態も違うだろうし,地域別のデータベースができれば,より正確な疫学モデルが作れるし,自治体ごとにより有効な対策が取れる。「誤陽性」の問題もあるが,PCR検査や他の精密検査と組み合わせれば十分に臨床的に使えると見ていいだろう。こういう検査に反対する連中は,厚労省か感染研の手先に違いない。



 ところで,私が不思議なのは,欧米と比べて日本の感染者数の増え方が極めて低いことである。指数関数的に増えていないのである(これから増えるのかもしれないが)。この理由としては,日本のPCR検査の数が少ないことや情報操作などが指摘されていて,私はそれも一理あるとは思うのだが,本当にそれだけだろうか。なんか,それだけでもないような気がする。つまり日本人は何らかの形で免疫を持っているんじゃないかという疑惑が,私の中で浮上してきている。

 これまではほとんどの人に免疫がないという前提で,イベント中止や移動制限などの隔離・封鎖政策が取られてきたわけだが,もしも多数の日本人がすでに抗体をもっているとなれば,このような封じ込め政策は無効である。というか社会的に有害ですらある。だから,いち早く抗体検査で集団免疫ができているのかどうか検証する必要がある。例えば東京都で1000~2000人をサンプル抽出して検査すれば,日本人のどれだけがコロナの免疫を持っているかがわかるだろう。わざわざバーやクラブへの営業妨害のような下らない記者会見をする暇があるんなら,今すぐにでも抗体検査キットを発注して,疫学的調査をやるべきだ!

 あと,BCGワクチンでコロナの免疫ができたんじゃないかというトンデモ説が出回っているが,ほとんどの医学者はきっぱりと否定している。確かに結核とコロナは全く関係ないと思うが,よくわかっていないウイルスなんだから,あらゆる可能性を疑ってみる必要はあるだろう。

 新型コロナの感染者が少ないことと併せて,私がもう一つ解せないのは,去年から今年にかけて日本におけるインフルエンザの感染者数が極めて少ないことである。コロナの影響で手洗いやうがいなど衛生に気をつけるようになったから,という説明がよくなされるが,これは去年の年末からインフルエンザが減っていることの説明にはならない。だってコロナが騒がれ始めたのは,2月初めのクルーズ船の頃だから。

 何の根拠もない推測なのだが,一つ考えられるのは,これまでの中国人との密接な交流のなかで,一定程度の日本人が旧型の弱毒コロナウイルスに感染し,その抗体を持っているために,新型コロナウイルスの感染者が少ないのではないか,という仮説である。そうだとすれば,日本がすでに集団免疫に近い状態にあることも十分に考えられる。これだけインバウンドで中国人が入ってきていたのに日本人の新型コロナ感染者がこれほどまでに少ないというのは,欧米から見たら不思議でならないだろう。日本人の一部に何らかの抗体があると考えるのが合理的ではないだろうか。また,その抗体がインフルエンザ感染の防波堤にもなっているとすれば,インフルエンザの感染者が少ないことも一応の説明がつく。

 まあ,こんな根拠薄弱な推測をするよりも,抗体検査を広くやってもらって,豊富なデータに基づいて議論したいものだ。

 一つはっきりと言えることは,日本の感染者数が少ないのは政府や感染研の対策が上手くいったからではない,ということである。むしろ逆で,検査体制を整備せずに,隔離や封鎖ばかりを場当たり的にやったがために大きな社会不安とパニックを招き,併せてファシズム政治に対する人々の「免疫力」を低下させた。私たちが「集団免疫」を成立させて打ち克つべき相手は,「緊急事態宣言」政治でもあることを忘れてはいけないだろう…