

東京オリンピックがやってはいけないイベントであることは前々から言ってきたわけで,今さら新型コロナのパンデミックを理由に「中止だ!」と言うのも筋が違うので,最近はオリンピックのことは書かなかったのだが,安倍や小池は,この期に及んでまだ「中止」ではなく「延期」だというので,改めて書いておこうと思った。
何でやってはいけないのかと言えば,韓国の民間団体が作った上のポスターやロゴがはっきりと物語っているわけであろう。私は韓国側の言うことを何でも肯定するわけではないし,韓国にもさまざまな問題があることは認めるが,この東京オリンピックに関しては,防護服・防毒マスクを着けて放射性物質を運ぶ聖火ランナーのポスターも,旭日旗と放射線警告マークを五輪マークに重ね合わせたデザインも,実に問題の本質をとらえたものと言わざるを得ないのである。つまりダダ漏れの放射性物質によって汚染された東京は,オリンピックなどできる状況ではないということ。ほとんどの人が忘れてしまっているが,まだこの国は「原子力非常事態宣言」が解除されていないんですけど…。
新型コロナの感染があろうがなかろうが,飛散し続ける放射性物質によって東京オリンピック・パラリンピックはやってはいけないのであって,「延期」などではなく,直ちに「中止・返上」されなければならない。ウイルスは遅かれ早かれ,いつかは終息するが,放射性物質による汚染は何十年,何百年も終息しない。食物連鎖を通じて体内に蓄積され,DNAを損傷して,その深刻な影響は孫やひ孫の代にまで及ぶ。さらに,愚かにも日本政府は放射性物質を含む汚染水120万トンを海に放出する方針を決めた。これは全人類に対する挑戦であり,生態系に対する「テロ行為」というべきものであろう。
【海にも空にも放射能をばらまくな。汚染水は超長期保管して放射能を十分に減衰させろ。】
— miyagi_no_nuke (@miyagi_no_nuke) March 24, 2020
福島第1の汚染処理水「30年かけて放出」 東電が案発表 海か大気に放出の場合 - 毎日新聞 https://t.co/2nzyWySrwj
横浜では放射性汚染土を埋めていた保育園で園児たちが白血病になった。また,東京オリンピック期待の星だったにもかかわらず白血病に罹った競泳の池江璃花子は,首都圏で最も汚染されていると言われる金町浄水場から水が流れこむプールで練習していた。聖火リレーが出発する福島も東京も放射能に汚染されており,極めて危険だ。
韓国のポスターが聖火ランナーを題材にした点も,現代オリンピックの欺瞞を突いているという意味で評価できるだろう。もともと聖火リレーを始めたのはナチス・ドイツであり,政治利用が目的であった。今回,福島原発前のJヴィレッジから出発する予定だった聖火リレーは,コロナの影響で中止になってよかったが,当初の予定ではJヴィレッジをスタート地点として,今も住民が帰れない警戒区域を走り抜いて「安全」をアピールするという,偽善的な政治ショーになるはずだった。
汚染土の詰まった黒いフレコンバッグが山積みにされ,廃炉作業はまだまだ続くのに,「復興」の象徴として聖火が走る。こんな矛盾と欺瞞にまみれた聖火リレーが行われていいのだろうか。このことを韓国のポスターは問うているのだと思う。
北海道ではアイヌの少年に聖火を持たせて走らせる予定だったという。そして東京の開幕式でもアイヌの舞踊が行われるのだという。こうして明治政府によるアイヌ侵略や,今も存在するアイヌへの就職・結婚差別は無かったことにされるのだろう。
小笠原博毅さんが『人民新聞』のインタビューで語っていた言葉が印象に残る。
五輪や聖火リレーは負の歴史のリセット装置であり,マイノリティは添え物にされるだけです。(『人民新聞』2019.6.25)
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1964年の東京オリンピックでも,最後の聖火ランナーには広島の原爆の日に生まれた人を起用し,露骨な政治利用をやった。戦争も原爆も原発事故もアイヌ差別も,スポーツの名の下にきれいに洗い流される。オリンピックの感動や興奮は一瞬,時代と人を光り輝かせるかもしれないが,決して目をそらしてはいけない負の記憶や現実を忘却の彼方に追いやってしまう。こんなイベントはスポーツではない。ウイルス以前に,こんなものはやってはいけないのである!
