三浦瑠麗の正体 | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…




 衆院選のあった夜の討論番組で,三浦瑠麗が「立憲民主党の敗北を総括せよ」などと訳の分からないことを言っていた。立憲民主党が負けたとは,どういう意味なのか。どうも,自民党が勝ったから立憲は負けたということにしたいらしい。「自民はこんなに議席を取ったのに立憲はこれだけしか取れなかった」という,まさかの相対評価。この人の脳内はどうなってるんだろう。立憲が票を伸ばして悔しいなら悔しいって正直に言えよ。こんな人が学者とかテレビ討論とかやっていていいんですかね。

 やはりこの似非学者は,安倍自民党からマスコミに送り込まれた,リベラル潰しの先兵だったのである。そのことが今回の選挙討論ではっきりしたんじゃないかな。立憲民主党がどれだけ議席を獲得しようが,絶対にリベラル派が勝ったことにはしないのである。「リベラルは馬鹿だ,だから負けた」という印象を視聴者に植え付けようとしているのが見え見えなんだよね。

 また,ウーマンラッシュアワーの村本さんが「共謀罪についてよくわからない」と発言したときも,「共謀罪について知識のない国民が悪い」などと,村本さんや庶民を見下すような発言をしていた。自分は共謀罪に反対していたなどと自分の責任は棚に上げる一方で,共謀罪が成立したのを国民の無知のせいにする。だが,多数の国民・市民は,個人のプライバシーが侵害され,国民生活が脅かされるのを感じ取って,共謀罪法案に反対意見した。そして今も廃止を求めている。そのことを彼女は知らない,というか知ろうとしない。そういう庶民の声を聞こうという姿勢がそもそもないのである。そういう庶民の生活に根ざした下からの声に耳を傾けることには意味がないと思っているのだ。なぜなら「国民は馬鹿だ」という信念が彼女にはあるから。こういう傲慢な知的エリーティズムが私は一番嫌いだ。

 こうした庶民蔑視,リベラル敵視の姿勢が,彼女の背骨として貫いている。その意味では,安倍首相―小池百合子―榊原(経団連)のラインに立っている。下の累進課税反対論やTPP賛成,国民皆兵制度の推進なども,そういう彼女の政治的な輪郭を浮き彫りにしているだろう。さらに,シビリアンコントロールで戦争は防げないという主旨の彼女の博士論文も,議会制民主主義を否定し,軍人政治に道を開く危ない論である。ちなみに,これに博士を与えたのが藤原帰一である。

 たとえば徴兵制の推進については以前,徴兵制を国民主権と結びつけて憲法に明記することを主張していた井上達夫さんを批判させてもらったが,三浦瑠麗はもっと好戦的というか,平和のためにこそ徴兵制が必要だとしている。すなわち,徴兵制で国民が「血のコスト」を平等に負担することが平和につながるらしい。「血のコスト」と言ってる時点で平和から逸脱していると思うのだが,貧しい国民が流す血は彼女の眼中にはない。要は,下々の国民は自らの生活や命は犠牲にしてでも,戦争のために常日頃から準備し,いざというときは国家のために命をかけて戦う義務がある,ということを一生懸命説得しようとしているのである。恐いね。こういう主張も全部,庶民を馬鹿にした彼女の知的傲慢,堕落したエリート主義から来ている。さすが藤原帰一さんの門下で,自民御用学者のホープだね。

 さらに彼女が自民党総裁賞を取ったという懸賞論文もひどい(「『日本の国際貢献のあり方』を考える」)。いきなり「生き様」と書いてる時点でそのレベルの低さが分かるというもの。まともな書き手なら,こういう社会科学系の論文で,「死に様」に由来する「生き様」なんて言葉は使わない。「生き様」という語法は,高度成長期かその後のころに武田泰淳か落語家あたりが書いたり喋ったりしたのが嚆矢であろう。こういう稚拙な文章が自民党の総裁賞を取ることも驚きだし,こういう学識も知性もない人間が学者の地位や教える立場にいて,またマスコミに出まくって危険な言説をまき散らしているのも大いに問題である。国際政治学はマイナーな分野だが,その専門研究者は藤原帰一や三浦瑠麗や村田晃嗣だけではない。ほかにもっとまともな学者がいるはずだ。テレビやマスコミはそういう真っ当な学者も使うべき。自民御用学者ばかりを使って政権擁護の世論を作るべきではない。

 では,まずは三浦瑠麗さんから「血のコスト」を払って戦場の前線に行ってもらいたいましょうか...。